輪島港から北へ五十キロ、日本海の只中に浮かぶ周囲四キロの舳倉島と、七尾湾の内側で凪を抱く能登島——震災から三度目の夏を迎えた能登半島で、ふたつの島はそれぞれの速度で旅人を迎えはじめた。本州の崖と外海の島、内海の橋と水族館の島。フェリーの時刻と能登島大橋を組み合わせて、外洋の島から内海の島へと渡る三泊四日の道筋を、ここに描いてみたい。海女が潜る島の宿で目を覚まし、和倉の湯に旅の塩を流し、能登島の炉端で締める。盛夏の能登を、本島ではなく「沖の島」を主役に旅するための行程である。
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。離島・小規模宿は料金データが限られるため、価格を省略した宿があります。
| 行程 | 宿 | エリア | Score | 客室 | 1行特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| Day1–2 | お宿たなか | 輪島・河井町 | 92 | 5 | 朝市と輪島塗の街なか、舳倉島フェリーの起点 |
| Day2–3 | 能州いろは | 七尾・和倉温泉 | 89 | 25 | 七尾湾を望む露天付き客室、対岸に能登島 |
| Day3–4 | 島の宿 えのめ荘 | 能登島・鰀目 | 83 | 6 | 1日4組限定、いろり炉端で能登の海の幸 |
Day 1–2. お宿たなか — 輪島・河井町(本島の起点)
朝市の路地と輪島塗の蔵を背に建つ、わずか五室の料理宿。海の向こうの舳倉島へ漕ぎ出す、旅の最初の灯り。
Media Picks Score: 92 / 100 5室、料理自慢の小宿。

なぜ選ばれるか
輪島の旅は、ここから海へ向かう。百軒以上の露店が朝の路地を埋める輪島朝市まで歩いてゆける街なかにありながら、宿は五室だけ。ズワイガニ、香箱ガニ、アワビ、サザエと、日本海の幸を主役に据えた献立が、この宿の輪郭をはっきりと描く。輪島塗の塗師蔵を模した特別室をはじめ、漆の艶を日常の器に落とし込んだしつらえが、能登という土地の手仕事を静かに伝えてくる。震災を越えて旅人を迎え直す、本島側の確かな起点である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、料理の質と量、そして主人夫妻の距離感のある温かさへの評価が、繰り返し浮かび上がってくる。小規模であるがゆえに一組一組へ目が届き、輪島塗や朝市といった土地の文脈を旅程に編み込んでくれる点が支持されている。観光の利便より、能登の食と工芸を腰を据えて味わう滞在に向く——そうした傾向が、集約された声からは読み取れる。
向く人 / 向かない人
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向く:
朝市と輪島塗を旅の核に据えたい人、舳倉島へ船で渡る前後泊を探す旅人、能登の海の幸を主役にしたい食通 -
向かない:
大浴場や温泉付き客室を求める旅、団体・大人数での宿泊、効率優先で宿に戻る時間が短い旅程
具体情報
- 立地: 輪島朝市まで徒歩圏(輪島市河井町)、舳倉島行きフェリー乗り場の輪島港まで近接
- 客室数: 5室(輪島塗をしつらえた特別室を含む)
- 食事: 日本海の魚介を主役にした料理(ズワイガニ・香箱ガニ・アワビ・サザエ ほか季節替わり)
- 舳倉島への接続: 輪島港発の定期船で外洋の島へ。海況により欠航する日もあるため、行程に予備日を取りたい
- 立地の核: 朝市・輪島塗の街なかと、外海の島への玄関を兼ねる
Day 2–3. 能州いろは — 七尾・和倉温泉(内海への橋渡し)
七尾湾を見渡す窓の向こうに、これから渡る能登島が浮かぶ。露天の湯に外海の塩を流し、内海の旅へと体を慣らす一夜。
Media Picks Score: 89 / 100 25室、和倉温泉の露天風呂付き客室の宿。

なぜ選ばれるか
外洋の島から内海の島へ。その間に、湯がある。和倉温泉に建つ能州いろはは、露天風呂付きの客室を旅の主軸に据えた宿だ。開放感のある大きな窓からは、能登島や机島が浮かぶ七尾湾が一望でき、対岸の島影が翌日の行程をそっと指し示す。猫足バスタブ付きの和洋室や次の間付きの客室など、部屋ごとに表情を変えるしつらえも、長い旅の中休みにふさわしい。震災を越えて営業を続ける和倉の湯が、外海で受けた旅の疲れを静かにほどいてゆく。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、客室の露天風呂とオーシャンフロントの眺望に対する満足が、評価の中心を占めている。和倉温泉という土地の湯量と、部屋で湯に浸かれる自由さの組み合わせが支持の核にある。一方で、規模が中程度であるぶん、最上級リゾートのような均一なきめ細かさを期待するより、和倉の湯と七尾湾の景色を主役に据える滞在に向く——そうした傾向が、集約された声からは見て取れる。
向く人 / 向かない人
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向く:
客室の露天風呂でくつろぎたい旅、七尾湾と能登島の眺めを部屋から味わいたい人、外海と内海の旅をつなぐ中継の湯を探す旅程 -
向かない:
離島の小宿だけで完結させたいミニマルな旅、温泉に関心の薄い人、街歩き中心で宿の滞在時間が短い旅程
具体情報
- 立地: 七尾市和倉町(和倉温泉)。七尾湾オーシャンフロント、対岸に能登島
- 客室数: 25室(露天風呂付き・猫足バスタブ付きの和洋室など)
- 眺望: 大きな窓から能登島・机島の浮かぶ七尾湾を一望
- 能登島への接続: 和倉温泉側から能登島大橋を渡り能登島へ(車でアクセス)
- 泉質: 和倉温泉の天然温泉。客室露天で湯を楽しめる
Day 3–4. 島の宿 えのめ荘 — 能登島・鰀目(内海の島で締める)
能登島大橋を渡った先、1日4組だけの島宿。いろりの炭火が能登の海の幸を炙り、内海の旅が静かに終わってゆく。
Media Picks Score: 83 / 100 6室、1日4組限定の炉端焼きの島宿。

なぜ選ばれるか
旅の終点は、内海の島の小さな宿。能登島の東、鰀目の集落に建つえのめ荘は、1日4組だけを迎える炉端焼きの島宿だ。いろりと炉端のコーナーで、能登の海から上がった魚介をその場で炙り、女将が頃合いを見て皿に運ぶ。観光客向けの宿泊を一度は閉ざしながらも、2025年の夏に営業を再開し、再び旅人へ島の食卓を開いた。のとじま水族館や内海の静かな浜が近く、外洋の島で始まった旅を、凪いだ能登島の夜で締めくくるのにふさわしい一軒である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、いろりを囲んで炭火で魚介を焼き上げる食事の体験そのものと、家庭的なもてなしへの評価が中心に立ち上がる。1日4組という限られた規模が、宿全体に静けさと余白をもたらしている点も支持されている。設備の真新しさより、島の暮らしの延長にある食卓と時間の流れを味わう滞在に向く——そうした傾向が、集約された声からは読み取れる。
向く人 / 向かない人
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向く:
いろり炉端で能登の魚介を味わいたい人、1日4組の静かな島宿を探す旅、のとじま水族館や内海の浜を楽しむ家族旅 -
向かない:
大浴場や温泉を主目的とする旅、ホテル仕様の設備や個別空間を重視する人、夜遅い到着や大人数での宿泊
具体情報
- 立地: 七尾市能登島鰀目町。能登島大橋を渡り島東部の鰀目集落へ
- 規模: 1日4組限定(客室6室)
- 食事: いろり・炉端焼き。能登の海の幸を炭火でその場で焼き上げる
- 再開: 2024年の震災後、2025年夏に営業を再開
- 周辺: のとじま水族館、内海の静かな浜が近い
よくある質問
Q. ベストシーズンはいつですか?
A. この行程は盛夏を念頭に組んでいる。舳倉島は夏に海女漁が最盛期を迎え、外洋を渡る定期船も運航が安定しやすい時期にあたる。能登島の内海も夏は穏やかで、水族館や浜辺の時間が心地よい。一方、外洋の島は海況次第で船が欠航することもあるため、梅雨明けから盛夏にかけての、海の落ち着いた日を選びたい。
Q. 舳倉島へは必ず渡れますか?
A. 舳倉島へは輪島港から定期船で約一時間半。外洋の航路のため、波の高い日は欠航することがある。行程には予備日を一日織り込み、渡れなかった場合は輪島の朝市や輪島塗の工房めぐりに切り替えられるよう、柔らかい計画にしておくと安心だ。一泊する場合は、島で唯一の宿の予約状況も早めに確認したい。
Q. 子連れでも巡れますか?
A. 能登島側は、のとじま水族館や内海の浜が近く、家族旅行に向く。島の宿 えのめ荘はいろり炉端の食事が体験として記憶に残るだろう。一方、舳倉島は外洋を渡る船旅で、島内も素朴なつくりのため、小さな子ども連れの場合は無理のない日帰り行程に留めるか、能登島と和倉を中心に組み替えるのが現実的だ。
Q. アクセスは?
A. 起点の輪島へは、のと里山空港から車で約20〜30分、金沢方面からは能登里山海道を北上する。舳倉島は輪島港発の定期船。和倉温泉は七尾線の和倉温泉駅が最寄りで、能登島へは和倉側から能登島大橋を渡る。島内や島どうしの移動は車が前提となるため、レンタカーを軸に組み立てたい。
Q. 震災からの復興状況は?
A. 2024年の能登半島地震を経て、能登半島では宿の休館や営業形態の変化が今も続いている。本記事で取り上げた3軒は、2026年の盛夏時点で一般の旅行者を迎えている宿を選んでいる。ただし状況は流動的なため、予約前に各宿の公式サイトで最新の営業状況を必ず確認してほしい。旅そのものが、土地の再起を支える一歩にもなる。
本記事の参考情報
・輪島市観光協会(輪島たび色) — 舳倉島フェリー・朝市・宿の最新情報
・能登島観光協会(ひょっこり能登島) — 能登島の宿・水族館・島の旅
・Wikipedia: 舳倉島 — 島の地理・海女文化・渡り鳥の背景
編集部から
外洋の島で始まり、内海の島で終わる三泊四日。舳倉島の波と能登島の凪は、同じ能登でありながらまるで別の海のようでいて、フェリーの時刻と一本の橋で確かにつながっている。震災から三度目の夏、宿は完全に元通りではないけれど、海女の島にも内海の島にも、旅人を迎える灯りが少しずつ戻ってきた。完璧に整った旅ではなく、土地の再起と並走する旅。それでも——いや、だからこそ、この夏に能登の沖の島を歩く意味があるのだと思う。あなたなら、外海の島と内海の島、どちらの夜を長く過ごしたいだろうか。