東京・竹芝から大型客船で約十時間、ジェット船でも三時間半。神津島と式根島は、伊豆諸島のちょうど中段にあって、八丈島ほど遠くなく、大島ほど近くもない。この距離感が、白い砂と海中温泉と、静けさを島に残してきた。神津島の多幸湾、式根島の足付温泉。海岸線に並ぶ宿の多くは十室前後の規模で、家族や漁師が代々続けている。船便と滞在動線、客室から海までの距離を軸に、編集部が選んだ五軒を紹介する。
| # | 宿 | 島 | Score | 客室 | 目安価格 | 1行特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 湯ったり宿 ひだぶん | 式根島 | 95 | 8 | — | 島の海中温泉三カ所すべてに動線が通る湯治の宿 |
| 2 | みんなの別荘ファミリア | 神津島 | 92 | 6 | ¥30–¥41k | 世界の旅先をテーマにした客室と一階のカフェバー |
| 3 | 民宿 菊乃屋 | 神津島 | 88 | 4 | ¥22–¥33k | 天上山登山口に最も近く2024年に新館ヴィラを併設 |
| 4 | 山下旅館 別館 | 神津島 | 86 | 14 | ¥26–¥32k | 神津島で唯一の温泉付き旅館、星空保護区の宿 |
| 5 | 漁師宿 かねやま | 式根島 | 82 | 9 | — | 現役漁師が営む宿、智佳丸の水揚げが食卓に並ぶ |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)。式根島の二軒は集計サンプルが十分でないため目安価格を伏せています。
1. 湯ったり宿 ひだぶん — 式根島
島の海中温泉三カ所すべてに歩いて出られる位置に、八室。式根島で湯を中心に滞在を組むなら、最初に検討する一軒。
Media Picks Score: 95 / 100 8室、漁師宿+温泉動線。

なぜ選ばれるか
式根島は無料の海中温泉が三カ所ある、伊豆諸島でも特異な島だ。ひだぶんはその足付温泉に最も近い位置に立ち、湯治を中心に島に来る人のために動線が設計されている。客室は和室・洋室・ドミトリーまで揃え、一人旅から長期滞在まで受け入れる。ツインベッド室、女性専用室の確保もある。素泊まり可、ミニキッチン・BBQ場の利用ができる点も、海中温泉と組み合わせた数日の滞在を想定したつくりに見える。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、温泉アクセスの良さと、長期滞在で食事を自分でも調達できる柔軟さに高い評価が集まる。スタッフの対応への言及が多く、初めての一人旅・釣り目的の連泊客から特に支持されている。一方で「民宿らしい簡素さ」を理解しないと驚く声もあり、リゾート的な設備を期待する向きには合わない。湯と海と素朴な食、という三点を求めて来る旅人の層に強い。
向く人 / 向かない人
-
向く:
湯治目的の連泊、海中温泉巡りを軸にした旅、一人旅・釣り客、自炊と外湯を組み合わせたい長期滞在 -
向かない:
高級リゾート設備を求める旅、短い滞在で観光地を回りたい旅程、洋食中心の食事を望む人
具体情報
- 最寄り港: 式根島・野伏港から徒歩約8分(タクシー無し、ジェット船・大型船発着)
- 最寄り温泉: 足付温泉まで徒歩2分、地鉈温泉まで徒歩約12分、松が下雅湯まで徒歩約10分
- 客室タイプ: 和室・洋室・和洋室・ドミトリー(女性専用室あり)、計8室
- 食事: 二食付き・素泊まり選択可、ミニキッチン・BBQ場利用可能
- 予約受付: 宿泊日の2ヶ月前から、団体15名以上は事前相談可
2. みんなの別荘ファミリア — 神津島
前浜港から徒歩十分、世界の旅先をテーマに六部屋がデザインされた、宿のふりをした仲間作りやさん。
Media Picks Score: 92 / 100 6室、B&B+カフェバー。
目安価格 ¥30,000–¥41,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
神津島の波止場に近い住宅地のなか、客室は六つだけ。各室は世界のどこかの旅先をテーマに、色彩と素材を変えて設計されている。一階にはカフェバーがあり、ソムリエ厳選のワインとオランダ産チーズが並ぶ。朝食は大きなテーブルを囲み、淹れたてのコーヒーと焼き立てパン。宿泊は二泊以上、家族以外のグループは四名までという運営方針が、騒がしさを排した滞在を保証している。前浜港・多幸湾港・空港から無料送迎あり、船便の不規則さに対しても柔軟だ。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、デザインの完成度と、宿主との会話を含む全体の居心地に高い評価が集中する。神津島という距離感の島で、これだけ視覚的に整った空間に出会う驚きを記す声が目立つ。朝食のパンとコーヒーへの言及も多い。他方、ドアの厚みや音の抜けなど建築の細部への注文もあり、設計言語に対して敏感な客層がそれだけ集まっているとも読める。
向く人 / 向かない人
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向く:
二泊以上のゆっくり旅、デザイン感度の高い旅人、カップル、海外メディアで島を知った外国人旅行者 -
向かない:
一泊だけの短期滞在、五名以上のグループ、賑やかなレジャー型を求める人、和食重視の人
具体情報
- 最寄り港: 神津島・前浜港から徒歩約10分
- 送迎: 前浜港・多幸湾港・神津島空港から無料(要予約)
- 客室: 6室、各室世界の旅先をテーマにデザイン
- 食事: 朝食付き(焼き立てパン+コーヒー)、夕食は一階カフェバーで個別注文
- 滞在ポリシー: 二泊以上、家族以外グループは4名まで
3. 民宿 菊乃屋 — 神津島
天上山の登山口に最も近く、2024年に新館ヴィラ菊乃屋を併設。島の山と海の両側で滞在が組める一軒。
Media Picks Score: 88 / 100 4室+新館ヴィラ、家庭的な民宿。
目安価格 ¥22,000–¥33,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
天上山の登山口に最も近い宿のひとつで、朝早く出発したい登山客が選ぶ。日々リノベーションを続け、2024年4月にはマリンブルーを基調とした新館ヴィラ菊乃屋がオープン。古い民宿の家庭味と、プチリゾートの設計を一つの敷地に併存させている。食事は神津島産の魚をメインに、自家栽培の野菜、島名産の明日葉を使った料理。星空観賞の拠点としても機能する。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、料理の評価が群を抜く。島の魚と明日葉の使い方、家庭料理の温度感に対する反応が多い。宿主家族の人柄への言及も多く、登山と組み合わせた一泊から、新館ヴィラで二泊以上ゆっくりする滞在まで、客層は広い。新旧二つの建物のどちらに泊まるかで体験は分かれるため、予約時に確認する旅人が増えている傾向もある。
向く人 / 向かない人
-
向く:
天上山登山を組み込む旅程、島の郷土料理を味わいたい人、新館ヴィラでリゾート寄りに過ごしたいカップル -
向かない:
民宿型の運営に抵抗がある人、大人数のグループ、夜遅くまでバーで過ごしたい旅程
具体情報
- 立地: 神津島・天上山登山口より最寄り、前浜港から徒歩約12分
- 客室: 本館4室+新館ヴィラ菊乃屋(マリンブルー基調、2024年4月開業)
- 食事: 神津島産の魚・自家栽培野菜・島名産の明日葉を使った郷土料理
- 送迎: 港・空港送迎あり(要予約)
- 用途: 登山、星空観賞、海水浴の拠点として運営
4. 山下旅館 別館 — 神津島
神津島で唯一の温泉付き旅館、十四室。湯白翁温泉と星空保護区の夜空、二つの自然資源を内側に持つ宿。
Media Picks Score: 86 / 100 14室、温泉旅館。
目安価格 ¥26,000–¥32,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
神津島で温泉が引かれている旅館は、現在この一軒だけ。自家源泉ではなく町営の湯白翁温泉源を使うが、宿内で完結する湯動線は他にない。神津島は2020年に星空保護区(国際ダークスカイ協会認定)になっており、別館は集落のなかでも光害が比較的少ない位置に立つ。海の見える客室と、温泉、夜の天体観測。島で過ごす夜が、旅館の輪郭そのものに含まれている。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、温泉と立地への評価が支柱になっている。料理の量と地魚の質には支持、一方で設備や建物の経年に対する声も一定数ある。日本旅館の昔ながらの仕様を理解して泊まる客層が、温泉と星空という独自資源を受けに来ている構造で、十四室という規模感もこれを支えている。新しい設計を求めるなら他の宿、温泉を求めるならここ、という分かれ方が読み取れる。
向く人 / 向かない人
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向く:
神津島で温泉に入りたい旅、星空観賞メインの旅程、伝統的な日本旅館の佇まいを好む人 -
向かない:
新築・モダンな設備を期待する人、ベッド主体の洋室を望む人、登山客で早朝出発したい旅程
具体情報
- 温泉: 神津島で唯一の温泉付き旅館(湯白翁温泉源を使用)
- 客室: 14室、海の見える部屋あり
- 立地: 神津島集落内、前浜港から徒歩約8分
- 夜空: 国際ダークスカイ協会認定の星空保護区内(2020年認定)
- チェックイン: 13:00〜 / アウト 9:00
5. 漁師宿 かねやま — 式根島
現役漁師の宿。智佳丸の水揚げが直接食卓に並ぶ、島中心部の九室。
Media Picks Score: 82 / 100 9室、漁師宿。

なぜ選ばれるか
オーナーが現役の漁師で、所有する漁船・智佳丸で水揚げした魚が、その晩の食卓にそのまま並ぶ。式根島の中心に位置するため、海中温泉群へも野伏港へも徒歩で動ける。Wi-Fi完備、九室の規模で運営は家族中心。観光地化されていない式根島の、生活と漁業が地続きの空間に泊まる経験そのものを買いに来る宿だ。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、魚料理への評価が最も高い。種類と鮮度に対する驚きの言及が中心で、漁師宿という運営形態が食事の競争力に直結している構造が見える。逆に、室内設備の新しさやデザイン要素を求める客には合わないことも、書き方の傾向から透ける。式根島で何を食べたかを旅の記憶に残したい人に向いた選択肢になっている。
向く人 / 向かない人
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向く:
島の魚料理を最優先する旅、海中温泉巡りの拠点、漁師との会話を楽しみたい旅人 -
向かない:
モダンな客室を期待する人、夕食を外で取りたい旅程、菜食中心の食事を望む人
具体情報
- 立地: 式根島中心、野伏港から徒歩約10分、海中温泉群(足付・地鉈・松が下雅湯)へも徒歩圏
- 食事: オーナーの漁船・智佳丸の水揚げを直送、地魚中心の二食付き
- 客室: 9室、和室中心
- 設備: 無線Wi-Fi完備
- 連絡受付: 8:00〜20:00、電話 04992-7-0303
よくある質問
Q. ベストシーズンはいつですか?
A. 6月下旬から7月中旬が編集部の推す時期。ジェット船の定期就航が安定し、海開き後の白砂が映える。8月は混雑し船便も逼迫するため、ピークを外して訪れる旅程に分がある。冬季はジェット船の欠航率が上がり、大型客船のみの運航日が増える点に注意。
Q. 神津島と式根島、どちらを軸に滞在するべきですか?
A. 山と白砂と星空を求めるなら神津島(天上山と多幸湾、星空保護区)、無料の海中温泉と素朴な滞在を求めるなら式根島。両島を巡る場合は神津島3泊+式根島2泊が一つの定型で、村営連絡船で島間移動が可能。
Q. 予約のタイミングは?
A. 6〜8月のジェット船定期便期は2〜3カ月前から埋まる。10室前後の小規模宿が多いため、希望日が決まり次第早めに連絡を入れる方が安全。長期滞在(3泊以上)を伝えると、家族経営の宿は柔軟に対応してくれる傾向がある。
Q. アクセスは?
A. 東京・竹芝桟橋から大型客船で約10時間(夜行)、ジェット船で約3時間半。神津島は調布飛行場からの空路もあり約45分。式根島は新島経由で大型船・ジェット船とも停泊する。両島間は村営の連絡船「にしき」で約15分。
Q. 子連れや外国人旅行者でも泊まれますか?
A. 民宿・漁師宿は家族経営が多く、子連れは事前に伝えれば柔軟に対応してくれる。英語対応はファミリアが最も体系化されており、海外メディアからの宿泊客も多い。他の四軒は日本語中心で、翻訳アプリ前提の会話になる。
本記事の参考情報
・神津島観光協会公式サイト — 島の宿泊施設・船便・観光情報
・式根島観光協会公式サイト — 海中温泉・海水浴場・宿の情報
・Wikipedia: 神津島 — 地理・歴史・天上山・星空保護区認定の経緯
編集部から
伊豆諸島の中段にある二島は、大島ほど東京から近くなく、八丈島ほど遠くもないという位置が、観光地化のテンポを島ごとの暮らしから少し外してきた。神津島は山と白砂と星空、式根島は海中温泉と素朴な漁師の食。船便十時間という距離が選別になっており、辿り着いた旅人だけが見る景色がある。次に書きたいのは、八丈島の南郷と末吉、亜熱帯の樹相と火山の輪郭が同居するもう一段先の島の宿について。