三浦半島が相模灘へと細くなりきった先端、城ヶ島大橋の手前の崖の上に、2026年2月、ひとつの宿が降りた。「ふふ 城ヶ島 海風のしらべ」——国内のスモールラグジュアリーとして知られる「ふふ」が、ブランド10施設目にして初めて海に正対して選んだ場所である。西陽が相模灘を朱に染める時間、ルーフトップの先には水平線しかない。東京から車でおよそ90分。日帰りも届く距離にありながら、あえて一泊を選ばせる崖地のリゾートを、温泉源・標高・客室・海までの動線という4つの尺度から1軒で読み解く。

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。


ふふ 城ヶ島 海風のしらべ — 三浦市城ヶ島 · ルーフトップから相模灘に沈む夕陽
PHOTO: ふふ 城ヶ島 海風のしらべ — 公式サイトを見る →

相模灘へ崖が落ちる三浦半島の南端、全34室がただ海だけを見る——東京から最も近い「海のふふ」。

Media Picks Score: 94 / 100  34室、温泉付きスイート主体のスモールラグジュアリーリゾート。

目安価格 ¥119,900–¥187,800 / 泊 (2名1室・通常期)

崖の上に置かれたという事実

城ヶ島は、三浦半島の先端からさらに橋を一本渡った、神奈川県で最も南の有人島に近い岬の島である。ふふが選んだのは島の手前、三崎町城ヶ島の海食崖の縁だった。建物は海へ向かって段を落とし、相模灘の磯がそのまま足下に続く。一帯は遮るもののない外洋に面し、正面には伊豆大島、晴れた日の西には富士の稜線が浮かぶ。観光地としての城ヶ島はマグロと灯台の島として知られてきたが、ここに置かれた宿はその賑わいから少しだけ標高を上げ、海を見るためだけの距離を確保している。崖の上、という立地は眺望と同時に静けさを意味する。波音は届くが、人の声は遠い。

ふふは静岡・河口湖・日光・京都など、これまで温泉地や山あいの保養地を選んできたブランドである。横浜以南で、しかも海に正対する敷地を取ったのはこの城ヶ島が初めて。都市から1時間半という近接性と、外洋の崖という非日常を同じ場所で成立させた点に、このブランドの新しい選択がある。


ふふ 城ヶ島 海風のしらべ — 三浦市城ヶ島 · 全室オーシャンビューの客室と崖下の磯
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建築の言語 — 海へ開き、岩へ沈む

建物は崖の傾斜に沿って低く構え、海側を全面のガラスへと開いている。室内に入ると視界の半分が相模灘で占められ、家具はその水平線を妨げないよう低く抑えられている。素材は木と石、そしてダークトーンの面。明るい南国リゾートの白ではなく、外洋の岩肌と曇天の海に同調する落ち着いた色調が選ばれている。客室の窓辺にはソファを兼ねた段が設けられ、座ったまま波の動きを追えるようになっている。

象徴となるのがルーフトップだ。海へ突き出したデッキの先はガラスの手すりだけで遮られ、視界に陸地が入らない。床に走る間接照明が日没後に灯り、薄明から夜への移ろいを舞台のように見せる。建築が観光名所を「見せる」のではなく、海と空という変わり続けるものだけを切り取る装置として組まれている点に、この宿の設計思想が表れている。

滞在の体験 — 温泉、海、炭火

全34室はすべてオーシャンビューのスイートで、最小でも58㎡、最も広い「ふふオーシャンプレミアムスイート」は140㎡に達する。特筆すべきは、各室が海を望む温泉の内風呂を備えていることだ。城ヶ島で湧く療養泉を客室で独り占めにでき、湯に身を沈めたまま外洋の光の変化を眺められる。大浴場へ移動する必要はなく、滞在の時間は客室の窓辺と湯舟の間でほぼ完結する。

食は相模湾の地魚を軸に据える。三崎は古くからのマグロ水揚げ港であり、その地の利を活かした刺身と、炭火で素材に火を入れる料理が中心となる。全国から選んだ食材を合わせ、ワインや日本酒のペアリングも用意される。夜が更ければルーフトップのバーへ。灯りを落としたデッキで海風を受けながら一杯を傾ける時間は、この崖地でしか成立しない。チェックインからチェックアウトまで、滞在者の動線は「客室の湯」「食事の卓」「屋上の海」という三点をゆっくり往復するだけで足りる。


ふふ 城ヶ島 海風のしらべ — 三浦市城ヶ島 · 海を望む客室付き温泉内風呂
PHOTO: ふふ 城ヶ島 海風のしらべ — 公式サイトを見る →

立地と周辺 — 近さの意味

東京・羽田からおよそ90分、横浜方面からも2時間前後。新幹線の小田原から三崎方面へ南下する経路もある。首都圏のリゾートとしては破格に近い一方、半島の先端という地理が心理的な距離を生む。橋を渡って城ヶ島へ入れば、磯の遊歩道、馬の背洞門と呼ばれる海食洞、白い城ヶ島灯台が徒歩圏に点在し、宿の眺望に飽きたら島そのものを歩いて確かめられる。三崎港のマグロ、城ヶ島の磯料理、油壺・三浦海岸といった半島の景勝地も車で十数分から数十分の範囲にある。

近いからこそ、滞在に明確な意図が要る。観光を詰め込む旅程ではなく、海を見るために一泊を確保するという選択。そこにこの宿の使いどころがある。

集約レビューが映すこの宿の本質

2026年2月の開業からまだ日が浅く、宿泊者の評価はこれから蓄積されていく段階にある。現時点で公開レビューデータを集計したところ、評価の総量はまだ十分とは言えず、本記事のスコアは立地・建築・客室規模・温泉動線といった編集部の観察に基づく評価が中心を占める。ふふというブランドが河口湖や日光で積み上げてきた、客室の独立性と静けさを重んじる運営思想は、この城ヶ島にも引き継がれていると見て取れる。海前リゾートとしての真価は、季節を通じた海の表情の振れ幅——春の凪、初夏の海霧、冬の荒れた外洋——をどう滞在体験に翻訳するかにかかっている。その答えは、これから訪れる滞在者の声とともに明らかになっていくだろう。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    記念日に静けさと海を求めるカップル、客室で湯に浸かりながら過ごしたい大人2人旅、首都圏から短時間で非日常へ移りたい旅程、新規開業のラグジュアリーをいち早く確かめたい旅行者
  • 向かない:
    小さな子ども連れで賑やかに過ごしたい家族(崖地で段差と坂が多い)、観光地を数多く巡って宿は寝るだけという旅程、公共交通のみで身軽に着きたい人(最終アクセスに車が要る)、価格を最優先に宿を選ぶ旅

具体情報

  • 所在地: 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島693(三浦半島南端・城ヶ島大橋手前の崖上)
  • 客室数: 34室(全室オーシャンビュー・温泉内風呂付きスイート)
  • 客室サイズ: 58〜140㎡(スイート7タイプ/最大4名)
  • 温泉: 城ヶ島で湧く療養泉。各客室に海を望む内風呂を備える
  • 食事: 相模湾の地魚と炭火の和食。ワイン・日本酒のペアリングあり
  • 施設: 海へ突き出すルーフトップのバー/ラウンジ
  • アクセス: 東京・羽田から車で約90分
  • 言語対応: 日本語・英語・中国語(簡体/繁体)
  • 開業: 2026年2月

よくある質問

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 春から初夏が編集部の推す時期。凪いだ相模灘と、初夏に立ちのぼる海霧が晴れていく午後の光が美しい。日没後の薄明にルーフトップが灯る時間も狙い目で、空気の澄む冬は富士の稜線まで見通せる代わりに外洋が荒れる日も多い。海の表情の振れ幅そのものを楽しむ宿である。

Q. 子連れでも泊まれますか?

A. 客室は最大4名のスイートもあり家族での滞在は可能だが、崖地で段差と坂が多く、静けさを核に据えた宿のため、賑やかに過ごしたい乳幼児連れには動線が向きにくい。落ち着いて海を眺められる年齢の子どもとの記念旅に合う。

Q. 英語など多言語対応はありますか?

A. 日本語に加え、英語と中国語(簡体・繁体)に対応している。首都圏から近い外洋リゾートとして、訪日旅行者の滞在も想定した運営となっている。

Q. アクセスは?

A. 東京・羽田から車でおよそ90分、横浜方面からも2時間前後。三浦半島の先端、城ヶ島大橋の手前に位置する。最終区間は車での移動が現実的で、公共交通のみの場合は三崎口駅からバスを乗り継ぐ経路になる。

Q. 最低何泊から滞在する価値がありますか?

A. 一泊でも海の移ろいは十分に味わえるが、夕景・夜・翌朝の海という三つの表情を客室の湯から追うなら、連泊で時間に余白を持たせたい。観光を詰めず、海を見る時間を主役に置く滞在ほどこの宿に合う。

本記事の参考情報

ふふ JAPAN 公式 — 2025-2026 開業情報 — ブランドの新規開業に関する一次情報
観光かながわNOW — ふふ 城ヶ島 海風のしらべ — 神奈川県の公的観光情報
Wikipedia: 城ヶ島 — 島の地理・景勝の背景

編集部から

海を見るために、わざわざ崖の上に登る。城ヶ島のこの宿が問うているのは、近さを贅沢に変える方法そのものだ。東京から90分という距離は、これまでなら「日帰りで十分」を意味した。そこへ全室オーシャンビューの温泉スイートを置き、屋上から陸地の見えない海だけを切り取ってみせる——ふふが海で選んだ初めての答えは、移動時間ではなく地形で非日常を作るという宣言に近い。相模灘の光がどう滞在を変えるのか。次は、季節を変えて訪れたこの島の別の表情を書きたい。あなたなら、どの海の時間にこの崖を訪れるだろうか。

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