三浦半島が太平洋に向けて細く伸びていく、その尖端の手前に「ふふ 城ヶ島 海風のしらべ」は降りた。城ヶ島大橋を渡る前、相模灘と東京湾の境界を見下ろす崖の上。2026年3月15日に開業した全34室のオールスイートは、ふふブランドにとって初の海を望むリゾートであり、東京から日帰り可能な距離にありながら、意図的に泊まる理由を建築で語る一軒となった。

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。


ふふ 城ヶ島 海風のしらべ — 三浦半島南端の崖地に立つオールスイートの温泉リゾート、相模灘を望む俯瞰
PHOTO: ふふ 城ヶ島 海風のしらべ — 公式サイトを見る →

Media Picks Score: 91 / 100  34室、オールスイート温泉リゾート(カトープレジャーグループ運営)。

目安価格 ¥120,000–¥187,000 / 泊 (2名1室・通常期・夕朝食込)

城ヶ島という地理を選んだということ

三浦半島の最南端、城ヶ島大橋の手前。相模灘と東京湾、ふたつの海の境界を真上から見下ろせる立地は、関東のラグジュアリーリゾートが従来選んできた箱根・伊豆・軽井沢の文脈とは明確に異なる。山深さでも、火山の硫黄でも、高原の白樺でもなく、海と崖、そして潮の音を選んだ。羽田空港から車で約90分、品川駅から京急本線で三崎口駅、そこから車で15分。都心からこの距離で、太平洋に張り出した断崖の上に座する宿は、関東圏でほぼ例がない。

城ヶ島自体は古くから景勝地として知られ、北原白秋の「城ヶ島の雨」、馬の背洞門の海食洞、城ヶ島灯台の白い影が連なる、海岸地形のミュージアムのような島である。ふふ城ヶ島は、その島の手前、対岸の崖の縁を選んだ。これは島内ではなく島を見るためのロケーション選定であり、リゾートとしての設計思想を露わにしている。

建築 — 海風が抜けるための設計

ふふ 城ヶ島 海風のしらべ — 客室内観、全室オーシャンビューの源泉露天風呂付きスイート
PHOTO: 客室内観 / 公式サイトより

全34室はすべてオーシャンビューのスイートで、各室に源泉を引いた露天風呂を備える。客室棟は崖の地形に沿って雛壇状に配され、上層・中層・下層のどの位置からも海面までの視線が遮られない。海風の通り道を意図的に建築の中に取り込み、開口部・テラス・湯口の位置関係を風と光に従わせている。素材は地元三浦の石、神奈川の木、左官の自然色。装飾を削ぎ落とした上で、海と空のスケールに耐えられる建築のヴォリュームだけが残されている。

「海風のしらべ」という名は、設計の核そのものを表す。冬の北風、春のしらす船の汽笛、初夏の南風、夏の入道雲。季節ごとに音と光が変わる立地で、24時間のうちのどの瞬間に客室にいても、海の状態が分かる建築になっている。

滞在の輪郭 — 朝の光、夕の海、夜の星

夕方、相模灘に沈む太陽は、伊豆半島のシルエットの向こうに落ちる。客室の露天風呂に湯を張り、湯気の向こうに残照を見る、というのが多くの客室で叶う日没体験である。夜は東京湾を通過する貨物船の航海灯と、対岸の房総半島の街明かり、そして頭上の星。城ヶ島周辺は光害が少なく、晴れた夜は天の川が見える。

朝食は地元三崎港の鮮魚と三浦野菜を組み合わせた和定食。三崎は本マグロの水揚げ港として知られ、夕食コースには季節ごとの三浦の海と畑が並ぶ。春から初夏は、しらす、サザエ、地キンメ、新タマネギ、葉物、初夏のスイカが食卓に上る。山の懐石ではなく、海の懐石として組まれている。

ふふというブランドが城ヶ島で初めて選んだもの

ふふ 城ヶ島 海風のしらべ — 全客室に備わる源泉露天風呂、相模灘を一望
PHOTO: 客室露天風呂 / 公式サイトより

カトープレジャーグループが展開する「ふふ」は、河口湖・熱海・箱根・日光・奈良・京都など、温泉地・古都・高原という日本のリゾート文法の中心に立地してきた。城ヶ島はそのなかで唯一、外海に張り出した岬という選択である。山の中で内向きに静まる「ふふ熱海」「ふふ箱根」と比べ、城ヶ島は外を向く宿として設計されている。籠るための宿ではなく、海と空を取り込むための宿。これは横浜以南でふふが初めて取った位置づけであり、ブランドの空間表現の幅を示している。

同時に、東京から90分という都市近接性を持ちながら、滞在型のリゾートとして組み立てられている点も特徴的である。日帰り可能な距離にあえて泊まる、という編集的な動機を、建築と食、そして温泉の質で支える構成になっている。

集約レビューが映すこの宿の本質

2026年3月開業のため、公開レビューデータの集計母数はまだ薄い。同じふふシリーズの先行館(熱海・箱根・日光等)の集約傾向を参照すると、評価が高く出るのは「客室の温泉と眺望」「食事の地域性」「スタッフの距離感」の3点で、低めに振れやすいのは「価格帯」「夕食の量に対する好みの分岐」である。城ヶ島も、同じ評価軸が概ね当てはまるとみてよい。価格は2名1室で12万円台からが中央値で、これはふふシリーズ平均と整合し、関東圏のオールスイート温泉リゾートとして妥当な水準である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    記念日・ハネムーン、東京から90分の距離で本格的な温泉リゾートを求めるカップル、海と崖の地形に惹かれる旅人、ふふシリーズを横並びで体験している常連客
  • 向かない:
    幼児連れの家族旅(崖地の動線・湯温・客室構成が幼児向きでない場合がある)、温泉地らしい外湯歩きを求める旅程、団体・大人数の宴会利用

具体情報

  • 所在地: 神奈川県三浦市三崎町城ヶ島693
  • 最寄り駅: 京急本線 三崎口駅から車で約15分(送迎の有無は公式要確認)
  • 空港から: 羽田空港から車で約90〜100分
  • 客室数: 全34室、全室オーシャンビュー・全室源泉露天風呂付スイート
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • 食事: 夕朝食付(三崎港の鮮魚と三浦野菜の会席)
  • 開業: 2026年3月15日
  • 運営: カトープレジャーグループ「ふふ」シリーズ
  • 緯度経度: 北緯35.1345 / 東経139.6101

よくある質問

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 編集部が推すのは春から初夏(4月〜6月)と初秋(9月〜10月)。冬は相模灘の北風が強くテラスでの過ごし方が制限される一方、空気が澄み伊豆半島の稜線がはっきり見える。夏は南風の海と入道雲が画になる季節だが、相応に混雑する。春の桜と海、初夏のしらす漁、秋の三浦野菜と地キンメ、いずれも食の魅力が立つ時期である。

Q. 東京から日帰り可能な距離なのに泊まる意味は?

A. 城ヶ島の本領は朝と夕の海の表情にある。日中の観光だけでは、相模灘に沈む夕陽、夜の貨物船の航海灯、朝の凪いだ海と漁船の出航といった、滞在してはじめて見える光景には触れられない。客室の露天風呂で時間を区切らずに過ごすこと自体が、この宿の設計思想に含まれている。

Q. 英語対応はありますか?

A. 公式サイトに英語版が用意されており、開業時点で英語対応のスタッフが配置されている。三浦半島はまだインバウンドの主動線から外れているが、ふふブランドは海外メディアからの取材実績があり、英語でのコミュニケーション体制は整っている。

Q. 子連れでも泊まれますか?

A. オールスイートで客室広さに余裕はあるが、崖地の動線、客室露天風呂の湯温、夕食の懐石フォーマットなどから、編集部としては記念日のカップル滞在を中心の利用層と捉えている。子連れ滞在の可否は公式に直接確認することを勧める。

Q. 城ヶ島観光と組み合わせるなら?

A. 城ヶ島大橋を渡り島内へ。馬の背洞門、城ヶ島灯台、長津呂崎の磯、北原白秋詩碑などが徒歩〜短時間の車移動で巡れる。三崎港のマグロ、城ヶ島の海鮮丼、三浦海岸の魚介と組み合わせれば、半日〜1日の島時間が成立する。葉山・湘南方面と組み合わせる場合は、葉山経由で逗子から鎌倉まで足を延ばす2泊3日の旅程も組みやすい。

本記事の参考情報

ふふ 城ヶ島 海風のしらべ 公式サイト — 客室・温泉・食事・アクセス
ふふ JAPAN 公式ブランドサイト — シリーズ全体の位置づけ
Wikipedia: 城ヶ島 — 地理・歴史・景勝地の背景

編集部から

関東圏のラグジュアリー温泉リゾートは、これまで箱根・伊豆・那須・軽井沢の四方向に厚く広がってきた。城ヶ島は、その地図に新しい第五の方位を書き加える試みである。海岸という選択、崖地という地形、都市近接という距離、そして34室というサイズ。これらを組み合わせて何が起きるかは、開業1年目の春から初夏にかけての滞在で見えてくる。海風のしらべという名にふさわしい季節を選んで、編集部としては、まず春の南風と初夏のしらすの季節を勧めたい。次に書きたいのは、三浦半島から葉山・鎌倉、そして真鶴・湯河原までを繋ぐ、相模灘沿いのラグジュアリー回廊である。

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