愛犬と泊まれるヴィラに温泉が付くようになって、設計の問いがひとつ生まれた——犬と人は、同じ湯に入るのか、別の湯に入るのか。南房総から伊豆、那須、軽井沢の麓、そして志摩の入江まで、客室温泉を持つペット同伴ヴィラを設計の文法として読み解くと、宿ごとに異なる三つの答えが見えてくる。販売的な「犬連れ歓迎」ではなく、動物福祉と温泉文化が建築のなかでどう折り合うか。その選択を、Tabilog 編集部が 5 軒で追った。
| # | 宿 | エリア | Score | 設計類型 | 目安価格 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | THE HIRAMATSU 軽井沢御代田 | 長野・御代田 | 93 | 完全分離(人の温泉/犬の足洗い場) | ¥190–¥315k |
| 2 | マーフィ | 静岡・伊豆赤沢 | 92 | 同じ湯(貸切露天を犬と共有) | ¥37–¥41k |
| 3 | ホテルフォレストヒルズ那須 | 栃木・那須 | 91 | 別の湯(犬専用露天を別途設置) | — |
| 4 | ドギーリゾート野寛 伊勢鳥羽 | 三重・鳥羽 | 87 | 離れ独立(全室客室温泉+専用ドッグラン) | — |
| 5 | Hamiru’s Forest | 栃木・那須 | 85 | 折衷(客室露天+犬専用水場) | — |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。価格表示のない宿は公開データが十分でないため掲載を控えています。
1. THE HIRAMATSU 軽井沢御代田 — 長野・御代田
浅間山麓の森に、犬の湯と人の湯を建築で切り分けたドッグヴィラ。温泉は人のもの、犬には足洗い場と専用ドッグランを充てる。
Media Picks Score: 93 / 100 全37室(本館28室+ヴィラ9棟)、グラン・オーベルジュ。
目安価格 ¥190,000–¥315,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
軽井沢の西、御代田の6万㎡を超える敷地に点在する離れ。ドッグヴィラスイートは122㎡超の屋内に、半露天の温泉風呂とテラスを備える。設計の核心は明快で、温泉は人が浸かるもの、犬には専用の足洗い場と専用ドッグランが充てられる。湯船を共有しないという選択は、循環式の温泉を犬に使わせないという衛生上の判断であり、同時に「人の湯治と犬の遊び場を建築で分ける」という思想でもある。仏伊二つのレストランを擁するオーベルジュとして、滞在の主役はあくまで食と温泉に置かれている。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、広いテラスと半露天温泉の開放感、そして犬の足洗い場・専用ドッグランの動線への評価が一貫して高い。料理の完成度に触れる声も多く、ペット対応に妥協なくオーベルジュとしての格を保つ点が支持されている。一方、料金帯は本記事の中で最も高く、滞在の目的を温泉と食に明確に置ける旅程に向くという傾向が読み取れる。犬連れであることが滞在の質を下げないよう設計されている、という点に集約される。
向く人 / 向かない人
-
向く:
犬と人の生活動線を分けたい人、オーベルジュの食を主役に据える記念日滞在、温泉とドッグランを両立したいカップル -
向かない:
犬と一緒に湯船に浸かりたい人(温泉は人専用)、予算を抑えたい旅程、観光の移動を優先し滞在時間が短い旅
具体情報
- 最寄り駅: しなの鉄道・御代田駅からタクシー約10分(軽井沢ICから車約20分)
- 客室サイズ: 全室100㎡超、ドッグヴィラスイートは屋内122.8㎡・テラス含む181.7㎡
- 温泉: 全室にテラス付き半露天温泉風呂(人専用・循環)
- 犬の設備: 専用ドッグラン・足洗い場(客室温泉は犬の使用不可)
- 食事: グラン・オーベルジュ。Le Grand Lys(フレンチ)/La Lumière Claire(イタリアン)
2. ペットと泊まれる貸切天然温泉の宿 マーフィ — 静岡・伊豆赤沢
伊豆赤沢の小さな宿で、満天の星を望む貸切露天に犬と人が一緒に入る。温泉を共有させる、最も踏み込んだ一軒。
Media Picks Score: 92 / 100 全4室、ペット同伴の貸切温泉ペンション。
目安価格 ¥37,000–¥41,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
伊豆高原・赤沢の高台に建つ全4室の小宿。200m先の源泉から引いた天然温泉を、伊豆石の内湯と満天の星空を望む露天で楽しめる。特筆すべきは、この貸切露天を犬と一緒に使えること。空いていれば何度でも無料で貸し切れる仕組みで、人と犬が同じ湯にいる時間を許容する設計になっている。源泉かけ流しに近い「鮮度抜群」を謳う湯を、家族の一員である犬と分け合う——ペット同伴ヴィラの設計類型のなかで、最も大胆な選択をした一軒だ。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、貸切露天の鮮度と星空の眺め、そして犬と一緒に湯に入れる体験への満足が突出して高い。展望デッキや食事を含め、犬とずっと一緒に過ごせる動線が一貫している点が評価されている。小規模ゆえに混雑が少なく、貸切を取りやすいことも支持の理由として読み取れる。一方で、湯を犬と共有する設計は衛生面の考え方が人によって分かれるため、その文法を理解したうえで選ぶ宿だという傾向がある。
向く人 / 向かない人
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向く:
犬と同じ湯に浸かりたい人、小規模で静かな貸切温泉を求める旅、伊豆観光の拠点に手頃な価格で泊まりたい家族 -
向かない:
犬と人の湯を分けたい衛生重視の人、大型リゾートの設備を望む旅、ラグジュアリーな建築を期待する滞在
具体情報
- 所在地: 静岡県伊東市赤沢258-87(伊豆高原エリア)
- 客室数: 全4室の小規模ペンション
- 温泉: 200m先の源泉を引く天然温泉。伊豆石の内湯+星空の貸切露天(空き時は無料で何度でも貸切)
- 犬の入浴: 貸切露天に犬と一緒に入浴可(同じ湯を共有)
- 犬の設備: 足ふきタオル・トイレシート・食器・犬用おむつ・トイレボックスなどを用意
3. ホテルフォレストヒルズ那須 — 栃木・那須
那須高原のコテージに、飼い主用の露天と犬専用露天を別々に設けた一軒。同じ屋根の下で、二つの湯を分ける。
Media Picks Score: 91 / 100 全室コテージ/ヴィラのペットリゾート。

なぜ選ばれるか
那須高原の森に点在する全室コテージのペットリゾート。プレミアムルームヴィラやメゾネットルームヴィラには、飼い主用の天然温泉露天風呂とは別に「ワンちゃん専用露天風呂」が設けられている。湯船を共有するのでも、犬の入浴を諦めるのでもなく、人と犬それぞれに露天を用意するという「別の湯」の設計だ。バレルサウナやテニスコート3面分のドッグランも備え、滞在中ずっと犬と一緒でありながら、入浴という場面だけは衛生的に切り分ける。マーフィの共有と御代田の完全分離の、ちょうど中間に位置する答えである。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、犬専用露天風呂という設備の独自性、コテージごとに完結するプライベート感、そして広大なドッグランへの評価が高い。犬を湯に入れたいが人の温泉とは分けたい、という需要に正面から応えた設計が支持されている。サウナや屋根付きドッグランなど雨天対応の充実にも触れる声が見られる。一方、那須高原の別荘地に点在する立地ゆえ、移動には車が前提となる点が滞在の文法を決めている。
向く人 / 向かない人
-
向く:
犬も湯に入れたいが人の温泉とは分けたい人、コテージで気兼ねなく過ごしたい家族、ドッグランで存分に遊ばせたい旅 -
向かない:
公共交通のみで移動したい人、犬と同じ湯に浸かりたい人、都市型ホテルの利便を求める旅程
具体情報
- 所在地: 栃木県那須郡那須町高久乙1880
- 客室: 全室コテージ/ヴィラ(メゾネット・プレミアムなど複数タイプ)
- 温泉: 天然温泉。客室露天風呂付き+ワンちゃん専用露天風呂(人用と別に設置)
- 犬の設備: テニスコート3面分の広いドッグラン・屋根付きドッグラン・小型犬専用エリア
- アクセス: JR那須塩原駅より送迎サービス利用可
4. ドギーリゾート野寛 伊勢鳥羽 — 三重・鳥羽
的矢湾を望む鳥羽の離れに、全室客室温泉と140〜330㎡の専用ドッグラン。2024年春開業の志摩近接ヴィラ。
Media Picks Score: 87 / 100 全室離れ型・全室客室温泉付きのペット同伴ヴィラ。

なぜ選ばれるか
伊勢志摩の入江、的矢湾の北側に2024年春に開業した離れ型のドッグリゾート。全室に新美里温泉を引いた客室温泉が付き、各客室に140〜330㎡という広大なプライベートドッグランが配される。室内面積66〜115㎡の和モダンを基調とした空間は、棟ごとに完全に独立し、隣を気にせず犬と過ごせる。一棟が温泉とドッグランを内包して完結する「離れ独立」の設計で、志摩エリアでは数少ない客室温泉付きペットヴィラとして開業直後から注目を集めている。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、開業の新しさゆえの設備の清潔感、全室客室温泉と専用ドッグランが一棟に収まる独立性、和モダンの洗練されたデザインへの評価が見られる。志摩・鳥羽という海のリゾート地で温泉とドッグランを両立できる希少性も支持の背景にある。サンプル数はまだ蓄積途上だが、離れ型ゆえのプライベート感が滞在の核として読み取れる。海女と漁師の町という土地の文脈も、滞在に独特の余白を与えている。
向く人 / 向かない人
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向く:
伊勢志摩観光と犬連れ滞在を両立したい人、広い専用ドッグランを求める旅、新しい和モダン建築を好む家族 -
向かない:
公共交通中心の旅程(車アクセスが前提)、長い実績・口コミ蓄積を重視する人、犬と同じ湯に入りたい人
具体情報
- 所在地: 三重県鳥羽市畔蛸町127-53(的矢湾・志摩市境)
- 客室: 全室離れ型(室内面積66〜115㎡、5タイプ)
- 温泉: 新美里温泉を引く全室客室温泉付き
- 犬の設備: 各客室にプライベートドッグラン140〜330㎡(ノーリード利用可)
- 開業: 2024年春(第二伊勢道路・鳥羽南白木ICから車約15分)
5. Hamiru’s Forest — 栃木・那須
那須の森の全6棟ヴィラ。客室露天で人は温泉気分を味わい、犬には専用の水場を別に置く折衷の設計。
Media Picks Score: 85 / 100 全6棟・客室露天風呂付きの一棟貸しヴィラ。

なぜ選ばれるか
那須高原の森に建つ全6棟の一棟貸しヴィラ。各棟に客室露天風呂が付き、人は「温泉気分」の湯浴みを楽しめる一方、犬には専用のバスタブや水場が別に用意される。湯を完全に分けるのでも完全に共有するのでもなく、人の露天と犬の水場を同じ棟に共存させる折衷の設計だ。4ベッドルームから2ベッドルームまで棟タイプを選べ、犬用のドライヤーやタオル、トイレシートも整う。徒歩圏ではないが、車で10分の姉妹施設「那須ハミルの森」のドッグランも利用できる。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、一棟貸しならではの独立性、客室露天と犬専用水場が同居する使い勝手、そして「那須の観光を旅の主役に」という運営姿勢への共感が見られる。犬を連れていながら人の露天もしっかり楽しめるバランスが支持されている。棟ごとに完結するため他の宿泊客を気にせず過ごせる点も評価される。新しい施設ゆえサンプルは蓄積途上だが、折衷型の設計が滞在の自由度を高めている傾向が読み取れる。
向く人 / 向かない人
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向く:
人の露天と犬の水場を両立したい人、一棟貸しの独立性を求める旅、那須観光を主軸にした犬連れ滞在 -
向かない:
宿で完結する大型リゾートを望む人、公共交通のみの旅程、犬と同じ湯船に浸かりたい人
具体情報
- 所在地: 栃木県那須郡那須町高久乙802-179
- 客室: 全6棟の一棟貸しヴィラ(4BR/2BRデラックス/2BR)
- 温泉: 各棟に客室露天風呂(人用の温泉気分の湯)
- 犬の設備: 専用バスタブ・ドライヤー・タオル・トイレシート、棟内ガーデン
- ドッグラン: 車で約10分の姉妹施設「那須ハミルの森」を利用可
よくある質問
Q. ベストシーズンはいつですか?
A. 通年で滞在できるが、犬の体温調整を考えると、編集部が推す時期は秋。那須・軽井沢の麓は夏でも比較的涼しい一方、伊豆・志摩の海辺は真夏の屋外ドッグランが暑くなりやすい。紅葉期の那須高原や、海が穏やかになる秋の鳥羽は、犬連れの散歩にも温泉にも心地よい季節と言える。
Q. 犬と一緒に温泉(湯船)に入れる宿はどれですか?
A. 犬と同じ湯に入れるのは伊豆赤沢のマーフィで、貸切露天を犬と共有できる。フォレストヒルズ那須とHamiru’s Forestは犬専用の露天・水場を別に設け、御代田のTHE HIRAMATSUは温泉を人専用とし犬には足洗い場を充てる。設計の類型が宿ごとに異なるため、湯の共有可否は予約前に確認したい。
Q. 大型犬でも泊まれますか?
A. 多くの施設が小型犬から大型犬まで受け入れているが、頭数や犬種に上限を設ける宿もある。フォレストヒルズ那須は小型犬専用エリアを含む複数のドッグランを備え、野寛は各客室に140〜330㎡の専用ドッグランを持つ。大型犬や多頭での滞在を予定する場合は、頭数追加料金と客室タイプを事前に確認するのが確実だ。
Q. アクセスは?
A. いずれも車でのアクセスが基本となる。THE HIRAMATSU 軽井沢御代田は御代田駅からタクシー約10分・軽井沢ICから約20分、マーフィは伊豆高原エリア、フォレストヒルズ那須はJR那須塩原駅から送迎あり、野寛は鳥羽南白木ICから約15分。公共交通のみの旅程より、レンタカーや自家用車を前提とした計画に向く。
Q. 海外からの旅行者でも利用できますか?
A. ペット同伴ヴィラは英語対応が宿により差がある。THE HIRAMATSU はオーベルジュとして国際的な滞在に慣れているが、小規模ペンションでは日本語が中心となる場合が多い。海外から犬を帯同して滞在する際は、検疫や予約条件を含め、各公式サイトでの事前確認をすすめたい。
本記事の参考情報
・観光三重 — 伊勢志摩・鳥羽エリアの観光情報
・那須町観光協会 — 那須高原の観光情報
・Wikipedia: 的矢湾 — 志摩・鳥羽の地理的背景
編集部から
客室温泉を持つペット同伴ヴィラが増えるなか、5軒は同じ問いに異なる答えを返した。犬と人が同じ湯に入る赤沢のマーフィ、犬専用の湯を別に置く那須のフォレストヒルズ、湯を人専用とし犬に足洗い場を充てる御代田のTHE HIRAMATSU。共有・別の湯・完全分離という三類型は、動物福祉と温泉文化のあいだに引かれた線の引き方そのものだ。どの設計が正しいということではなく、犬と人の距離をどう測るかという思想の表明である。あなたなら、愛犬と同じ湯に浸かりたいだろうか、それぞれの湯を分けたいだろうか。その問いの答えが、選ぶべき一軒を教えてくれる。