由布院と別府は、九州・大分の同じ温泉文化圏でありながら、まったく異なる時間を流す二つの里である。由布岳の麓に静かな草原を抱える由布院に対し、別府湾の縁で湯けむりを上げ続ける別府。編集部はこの二つの湯どころから、地形と建築と滞在のあり方が際立つ5軒を選んだ。

# 宿 エリア Score 客室 目安価格 1行特徴
1 山荘 無量塔 由布院 93 12 ¥176–¥194k 由布岳麓・鳥越地区。全室離れ、古民家移築の意匠
2 草屋根の宿 龍のひげ/別邸 ゆむた 由布院 92 10 ¥70–¥102k ゆむ田の森に点在する10室の離れ。各室に半露天、二源泉混合
3 湯富里の宿 一壷天 由布院 92 10 ¥100–¥132k 2,300坪に10棟の離れ。1日10組限定、愛犬同伴の食事処も
4 くつろぎの温泉宿 山田別荘 別府 90 8 ¥31–¥38k 別府駅徒歩8分。1930年築の木造別荘、2源泉と露天
5 悠彩の宿 望海 別府 89 52 ¥48–¥81k 別府湾を見下ろす52室。関アジ関サバの食、海側客室は朝陽
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※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

1. 山荘 無量塔 — 由布院

由布岳の麓・鳥越の谷あいに、古民家を移築した離れが12棟。由布院で最も静かな一軒として、編集部が真っ先に推したい宿である。

Media Picks Score: 93 / 100  12室、離れ型旅館。

目安価格 ¥176000–¥194000 / 泊 (2名1室・通常期)


山荘 無量塔 — 大分・由布院鳥越 · 全12室すべて離れ、古民家移築のラグジュアリー旅館
PHOTO: 山荘 無量塔 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

鳥越という由布院の中心から離れた地区に、12棟の離れだけを置く。客室の多くは新潟などから移築した築100年超の古民家で、現代的な意匠が織り込まれている。敷地内には洋酒バー、蕎麦処、ショコラ専門店、美術館までを擁し、宿の外に出なくとも一日が完結する設計。ラグジュアリー価格帯ながら、由布院で最も完成された滞在設計のひとつ。

集約レビューの傾向

公開レビューの集約からは、建築・設備の独自性、静けさ、料理への評価が三位一体で高い傾向が読み取れる。一方で価格帯への言及も多く、特別な機会の宿として選ばれていることが分かる。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 記念日・大人二人の長めの滞在、由布院の喧騒を避けたい人、建築と工芸を楽しめる旅人
  • 向かない: 駅近・繁華街アクセスを重視する人、短時間で温泉街を歩きたい人、価格上限を抑えたい旅程

具体情報

  • 最寄り駅・アクセス: 由布院駅から車で約10分(タクシー1,700円前後)
  • 客室サイズ: 40〜100㎡(離れ型)
  • 客室数: 12室
  • 食事: 夕食・朝食ともに山里料理を個室または食事処で
  • 創業・建築: 1992年(前身の茶房は1983年)


2. 草屋根の宿 龍のひげ/別邸 ゆむた — 由布院

ゆむ田の森のなかに点在する10棟の離れ。屋根に龍のひげが揺れる、由布院でも特に距離感を残した宿。

Media Picks Score: 92 / 100  10室、全室離れ温泉旅館。

目安価格 ¥70000–¥102000 / 泊 (2名1室・通常期)


草屋根の宿 龍のひげ — 大分・由布院ゆむ田の森 · 由布岳を望む森の半露天風呂付き離れ
PHOTO: 草屋根の宿 龍のひげ/別邸 ゆむた — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

由布岳を望むゆむ田の森に、屋根を草で葺いた離れが点在する。各客室に半露天風呂を持ち、二つの源泉を混合して湯舟に直引きする方式。由布院駅前の喧騒からタクシーで13分という距離が、静けさを担保している。築年の新しい「別邸ゆむた」が併設され、現代的な設計の離れも選べる。

集約レビューの傾向

集約傾向としては、源泉の質と各室半露天の体験、森に囲まれた立地への評価が安定して高い。由布院駅前の徒歩アクセスを求める利用者には不向きという指摘も見られる。

向く人 / 向かない人

  • 向く: カップル旅、由布岳の景観と森林浴を求める滞在、各室半露天が必須条件の旅程
  • 向かない: 由布院駅前の商店街徒歩圏に泊まりたい人、小さい子連れで段差を避けたい家族

具体情報

  • 最寄り駅・アクセス: 由布院駅からタクシーで約13分
  • 客室サイズ: 客室により40〜80㎡(離れ型)
  • 客室数: 10室
  • 食事: 夕食・朝食ともに会席を個室で
  • 創業・建築: 草屋根の宿 龍のひげ 2010年/別邸ゆむた 2018年


3. 湯富里の宿 一壷天 — 由布院

2,300坪の敷地に10棟の離れだけ。愛犬と同じ食卓に座れる、由布院でも数少ない宿。

Media Picks Score: 92 / 100  10室、全室離れ温泉旅館。

目安価格 ¥100000–¥132000 / 泊 (2名1室・通常期)


湯富里の宿 一壷天 — 大分・由布院 · 約2,300坪に10棟の離れ、犬連れでの宿泊にも対応
PHOTO: 湯富里の宿 一壷天 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

1日10組限定。約2,300坪に10棟の離れが分散配置される。由布院では数少ない、愛犬と一緒に食事処へ入れる宿として知られる。由布岳の正面に向く客室があり、駅からタクシーで5分という距離も使いやすい。滞在中の動線設計に、無駄や合流の少なさが行き届いている。

集約レビューの傾向

プライベート感と1日10組という運営の徹底、犬連れでも食卓に同席できる点への評価が際立つ。敷地が広いため移動を伴う動線への言及がいくつかある。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 愛犬と旅する人、由布岳の正面が見える離れを希望する人、1日10組限定の静けさを求める人
  • 向かない: 繁華街への徒歩アクセスを最優先する旅、複数人グループでの広い宴会場利用

具体情報

  • 最寄り駅・アクセス: 由布院駅からタクシーで約5分
  • 客室サイズ: 50〜90㎡(離れ)
  • 客室数: 10室
  • 食事: 夕食・朝食ともに個室。愛犬同伴可の食事処も用意
  • 創業・建築: 2006年


4. くつろぎの温泉宿 山田別荘 — 別府

1930年(昭和5年)築の木造別荘が、別府駅から徒歩8分にそのまま残る。

Media Picks Score: 90 / 100  8室、昭和初期木造旅館。

目安価格 ¥31000–¥38000 / 泊 (2名1室・通常期)


くつろぎの温泉宿 山田別荘 — 大分・別府北浜 · 1930年(昭和5年)建築、保養別荘から続く木造旅館
PHOTO: くつろぎの温泉宿 山田別荘 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

別府駅から徒歩約8分。1930年に保養別荘「静寿堂」として建てられた木造2階建てが、戦後に旅館へ姿を変え、約600坪の敷地で今も昭和初期の佇まいを残す。2源泉を持ち、レトロな内湯と露天を備える。建築そのものが滞在の価値となる、希少な現役建築。

集約レビューの傾向

昭和初期建築そのものと、女将の運営姿勢、駅徒歩圏の街歩き起点としての利便性への評価が三本柱。木造旅館ゆえの音や階段への注記も時折見られる。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 建築・歴史への関心、別府の街歩き起点としての滞在、レトロ建築を楽しめる旅人
  • 向かない: 最新設備のホテルを求める旅、エレベーターやバリアフリーを必須とする人

具体情報

  • 最寄り駅・アクセス: 別府駅から徒歩約8分(車で約3分)
  • 客室サイズ: 約8〜12畳の和室中心(一部洋室)
  • 客室数: 8室
  • 食事: 夕食・朝食ともに食事処で。地魚と豊後牛が軸
  • 創業・建築: 1930年(昭和5年・保養別荘「静寿堂」として)


5. 悠彩の宿 望海 — 別府

別府湾を客室から見下ろす52室。北浜の朝陽と関アジ関サバの食を持つ、街と海の宿。

Media Picks Score: 89 / 100  52室、海前温泉ホテル。

目安価格 ¥48000–¥81000 / 泊 (2名1室・通常期)


悠彩の宿 望海 — 大分・別府北浜 · 別府湾を望む52室の温泉ホテル、関アジ関サバの食
PHOTO: 悠彩の宿 望海 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

別府湾に面した北浜エリアに位置し、客室の多くから海が見える。関アジ関サバ、ふぐ刺し、豊後牛といった大分の食材を会席で組み立てる。別府駅徒歩圏で別府八湯巡りの拠点に向き、規模ゆえに家族・三世代旅にも対応できる。

集約レビューの傾向

海側客室の眺望、地魚を中心とする会席、駅徒歩圏の利便性が支持される一方、52室の規模感ゆえに大浴場や食事会場での時間帯混雑への言及もある。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 海の景観を客室から楽しみたい人、別府八湯巡りの拠点を駅近に置きたい旅、ある程度の規模感を好む滞在
  • 向かない: 全室離れの完全プライベートを求める旅、混雑を避けて静けさだけを優先する人

具体情報

  • 最寄り駅・アクセス: 別府駅から徒歩約12分(車で約4分)
  • 客室サイズ: 海側客室は約12畳〜広めのスイートまで
  • 客室数: 52室
  • 食事: 夕食は和会席、地魚と豊後牛中心。朝食は和洋
  • 創業・建築: 創業以来複数回の改装、近年も客室更新


よくある質問

Q. 由布院と別府、どちらに泊まるべきですか?

A. 静けさと建築を優先するなら由布院、街歩きと海・別府八湯を巡るなら別府が向く。両泊を一泊ずつ組む旅程も、車またはタクシーで30〜40分なので無理がない。編集部としては、由布院で一泊、別府で一泊の構成が二つの湯どころを最も対比的に味わえる。

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 新緑が美しい5月後半から6月、紅葉の11月が編集部の推す時期。冬は湯けむりが立ち昇る別府の景観が際立つ。夏は標高がある由布院でも気温が上がるため、避暑感は限定的。GW・年末年始・お盆は予約が早期に埋まる。

Q. 海外からの旅行者にも対応していますか?

A. 由布院・別府ともに台湾・韓国・香港からの利用者が多く、英語と中文の対応は宿により差はあるが概ね滞在は成立する。山荘 無量塔と湯富里の宿 一壷天は海外メディアでの紹介歴があり、インバウンド客の利用にも慣れている。

Q. 子連れでも泊まれますか?

A. 山田別荘・悠彩の宿 望海は子連れでも比較的入りやすい。山荘 無量塔と草屋根の宿 龍のひげ、湯富里の宿 一壷天は離れ型で段差や階段がある宿が含まれるため、小さい子連れの場合は事前に客室タイプの確認が必要。

Q. 予約はどのくらい前に取るべきですか?

A. 由布院の3軒(無量塔・龍のひげ・一壷天)は週末や連休で2〜3か月先まで埋まることがある。別府の2軒は1か月前でも比較的取れるが、海側客室の指定や週末は早めが安全。

本記事の参考情報

大分県観光情報公式サイト — 大分県全域の観光情報
YUFUINFO(湯布院町観光協会) — 由布院温泉の公式観光情報
別府市観光協会 — 別府温泉と別府八湯の公式情報

編集部から

由布院と別府は、九州の同じ温泉文化圏に位置しながら、湯けむりの立ち上がり方も、客室の窓の向こうの景色も、まったく違う。由布院の3軒は森と草原に客室を散らし、別府の2軒は街と海に近い。今回の5軒の選定軸は、湯の質と立地の独自性、そして滞在時間そのものの設計に置いた。次に書きたいのは、両者の中間に位置するあまり知られていない別府の鉄輪エリアと、湯布院の朝霧が消えるまでの時間を主役にした宿選びである。