日本海の水平線に、三つの島影が南から北へと点を打つ。新潟の沖に横たわる佐渡、村上の沖に浮かぶ小さな粟島、そして山形唯一の離島・飛島。この旅は、その三島を一本の航路として継ぐ4泊5日である。両津・岩船・酒田という本土の港をいったん踏み、また船に乗り換えながら、緯度を北へ上げていく。海が凪ぐ夏から初秋、高速船の欠航が減るこの季節にだけ組める、日本海側の島旅を紹介する。
| Day | 宿 | 島・港 | Score | 客室 | 本土からの航路 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1–2 | HOTEL大佐渡 | 佐渡・相川 | 92 | 74 | 新潟港→両津港 高速船 約65分 | 春日崎の断崖、全室オーシャンビュー |
| 3 | かねひら旅館 | 粟島・内浦 | 78 | 8 | 岩船港→内浦港 高速船 約35分 | 島の宿の先駆け、内浦港前の家族宿 |
| 4–5 | 沢口旅館 | 飛島・勝浦 | 90 | 10 | 酒田港→勝浦港 定期船 約75分 | 山形唯一の離島、本館と別館の二棟 |
Media Picks Score は公開レビューデータを集計し、立地・規模・航路条件を編集部が加味した参考指標です。船の便数・所要は季節や気象で変わるため、各運航会社の最新情報を確認してください。
Day 1–2 ── 佐渡・相川、日本海に沈む夕日の宿
1. HOTEL大佐渡 — 佐渡・相川
春日崎の断崖に建ち、全室が日本海を向く。相川湾に落ちる夕日と漁火を、露天風呂の湯面から眺める一軒。
Media Picks Score: 92 / 100 74室、島西岸の温泉ホテル。
本土からの航路 新潟港→両津港 高速船 約65分 (カーフェリー 約2時間30分)+両津港から相川へ車で約40分

なぜ選ばれるか
佐渡の西岸、かつて金山で栄えた相川の海沿いに立つ。名勝・春日崎の断崖を背に、客室はすべて海に向いて開く。理由は三つ。第一に、水平線がそのまま部屋の借景になる全室オーシャンビューの立地。第二に、2023年に整えられた「水のテラス」が、館内から日本海へと水面を続かせる設え。第三に、日本海に沈む夕日と、夜の漁火を望む春日崎温泉の露天風呂。西陽が湾を染める時間帯に湯に浸かるためだけに、この宿を旅程の起点に据える価値がある。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、評価は一貫して「夕景」と「湯」に集まる。海に面した露天風呂と、刻々と色を変える相川湾の落日を挙げる声が目立ち、島内では規模の大きい宿でありながら、海との距離の近さが支持されている。食は佐渡近海の魚が中心で、量と鮮度への評価が高い一方、大型館ゆえの団体対応や時間帯の混み合いに触れる感想も見られる。静けさより、海景の伸びやかさを求める滞在に向く傾向が読み取れる。
向く人 / 向かない人
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向く:
日本海の落日を旅の起点にしたい人、海に面した露天風呂を重視する滞在、佐渡金山・尖閣湾など西海岸を車で巡る旅程 -
向かない:
小規模宿の静けさを最優先する人(大型館で客室数が多い)、両津港周辺だけで完結させたい短い滞在(相川まで車で約40分)
具体情報
- 本土からの航路: 新潟港→両津港 ジェットフォイル約65分/カーフェリー約2時間30分(佐渡汽船)
- 島内アクセス: 両津港から相川方面へ車で約40分
- 客室: 74室、全室オーシャンビュー(温泉露天風呂付き客室あり)
- 温泉: 春日崎温泉。日本海を望む露天風呂・サウナ付き大浴場
- 立地: 名勝・春日崎の断崖上、佐渡市相川鹿伏
Day 3 ── 粟島・内浦、島の宿の先駆けへ
佐渡からいったん本土へ戻る。両津港から新潟港へ渡り、鉄道と車で村上の岩船港へ。そこから高速船で約35分、周囲わずか23キロほどの小島・粟島に着く。集落は東の内浦と西の釜谷のふたつ。港に降りれば、島の宿はすべて歩いて回れる距離にある。
2. かねひら旅館 — 粟島・内浦
内浦港からラグーンのような入り江を数分。島の宿の先駆けとして、代々営まれてきた磯前の一軒。
Media Picks Score: 78 / 100 8室、家族で営む島の旅館。
本土からの航路 岩船港→内浦港 高速船 約35分 (フェリー 約1時間30分)/内浦港から徒歩約5分

なぜ選ばれるか
粟島に旅館が生まれるより前、この島で早くから客を迎えてきたのがかねひらだと言われる。内浦の集落の中ほど、港から歩いて数分の位置にあり、隣接する商店では島の地酒も扱う。選ぶ理由は三つ。第一に、島の宿の先駆けという来歴と、本保家が代々受け継ぐ運営の連続性。第二に、内浦港・海水浴場・日帰り湯「おとひめの湯」のいずれにも近い、島歩きの拠点としての立地。第三に、粟島近海で揚がった魚を刺身や名物のわっぱ煮で出す、飾らない磯料理。規模は八室と小さく、島の家族の家に招かれるような距離感がある。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、粟島の宿全般に共通して、魚の鮮度と家族的なもてなしへの言及が中心を占める。かねひらについても、港からの近さと、島の暮らしにそのまま触れられる素朴さが評価の軸になっている。一方で、大浴場や近代的な設備を求める滞在には物足りなさが残るという傾向も読み取れる。宿の完成度ではなく、島そのものと過ごす時間を目的とする旅人に向く一軒である。
向く人 / 向かない人
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向く:
島の暮らしに近い距離で過ごしたい人、港を拠点に歩いて島を巡る旅、磯の魚を目当てにした素朴な滞在 -
向かない:
大浴場やホテル並みの設備を求める人、客室数の多い宿の匿名性を好む人、悪天候での欠航に予定を左右されたくない旅程
具体情報
- 本土からの航路: 岩船港(村上市)→内浦港 高速船「awaline きらら」約35分/フェリー約1時間30分(粟島汽船)
- 島内アクセス: 内浦港から徒歩約5分。日帰り湯「おとひめの湯」も徒歩圏
- 客室: 8室、家族経営の島の旅館
- 食事: 粟島近海の刺身、名物わっぱ煮など磯料理(1泊2食)
- 立地: 内浦集落、新潟県岩船郡粟島浦村
Day 4–5 ── 飛島・勝浦、山形唯一の離島へ
粟島から再び本土へ。岩船港から北へ、村上・鶴岡を経て酒田港まで海岸沿いを辿る。酒田の沖、約39キロの海上に浮かぶのが山形県唯一の離島・飛島。定期船「とびしま」で約75分、船は勝浦の港に着く。便は1日1〜2便に限られるため、この島だけは復路の時刻から旅程を逆算することになる。
3. 沢口旅館 — 飛島・勝浦
勝浦の港のすぐそば、本館と別館の二棟。海食地形の島を歩く拠点になる、山形唯一の離島の旅館。
Media Picks Score: 90 / 100 本館・別館の二棟、約10室。
本土からの航路 酒田港→勝浦港 定期船 約75分 (定期船「とびしま」1日1〜2便、季節運航)/勝浦港からすぐ

なぜ選ばれるか
飛島の玄関口・勝浦の港から、歩いてすぐの集落に本館と別館の二棟を構える。バードウォッチングを描いた漫画『しあわせ鳥みんぐ』の舞台としても知られ、渡り鳥の中継地・飛島を訪ねる旅人の宿として長く親しまれてきた。選ぶ理由は三つ。第一に、港のそばという、船の時刻に左右されるこの島で最も心強い立地。第二に、サザエやトビウオなど飛島の磯の幸を並べる食事。第三に、二棟に分かれた構えが生む、島の宿としては余裕のある滞在環境。海食崖やタブノキ林を歩く一日の起点に据えたい。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、料理の満足度と、島でのもてなしへの評価が突出している。飛島で揚がる魚介の豊かさと、少ない便で渡ってくる客を迎える丁寧さに言及が集まる。設備は近代的なホテルとは性格が異なるが、離島という条件を踏まえたうえで、期待を上回ったとする傾向が読み取れる。何よりも、船が1日数便という飛島にあって、港前という立地そのものが滞在の安心感につながっている。
向く人 / 向かない人
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向く:
海食地形やタブノキ林を歩く自然散策、渡り鳥・海鳥の観察、磯の魚を目当てにした離島滞在 -
向かない:
天候で船が欠航しても代替手段を求めたい人、大浴場や温泉を主目的にする滞在、時間に厳密な旅程を組みたい旅(定期船は1日1〜2便)
具体情報
- 本土からの航路: 酒田港→飛島・勝浦港 定期船「とびしま」約75分(1日1〜2便、季節運航)
- 島内アクセス: 勝浦港からすぐの集落内
- 客室: 本館・別館の二棟、約10室
- 食事: サザエ・トビウオなど飛島近海の磯料理(1泊2食)
- 立地: 山形県酒田市飛島字勝浦、山形県唯一の有人離島
よくある質問
Q. ベストシーズンはいつですか?
A. 海が凪ぐ7〜9月が航路の安定する季節である。高速船・定期船とも欠航が減り、粟島の海水浴や飛島の磯歩きにも合う。反面、夏の週末や連休は島の宿が早くに埋まりやすい。編集部が推す時期は、混雑がやや落ち着き海がまだ穏やかな9月上旬から中旬にかけて。冬季は日本海が荒れ、飛島の定期船は減便・欠航が続く。
Q. 予約のタイミングは?
A. 三島とも宿の客室数が少なく、とくに粟島・飛島は数室規模のため、夏の週末は2〜3か月前には満室になることがある。船とセットで日程が固まった時点で、宿と乗船を同時に押さえておきたい。飛島は定期船の便数が限られるので、まず船の時刻を確定してから宿の泊数を決めるのが順序になる。
Q. 子連れでも滞在できますか?
A. 佐渡のHOTEL大佐渡は客室数が多く、海水浴や佐渡金山など家族向けの行程を組みやすい。粟島のかねひら旅館、飛島の沢口旅館は家族経営の小さな宿で、事前に相談すれば子連れの滞在に応じてもらえることが多い。ただし島内の移動手段や医療機関は限られるため、乳幼児連れは船の所要と便数を踏まえて無理のない日程にしたい。
Q. アクセスは?
A. 佐渡は新潟港から両津港へ高速船で約65分。粟島は村上市の岩船港から内浦港へ高速船で約35分。飛島は酒田港から勝浦港へ定期船で約75分。三島の間に直行の航路はなく、いったん本土の港(両津→新潟、内浦→岩船、勝浦→酒田)に戻って乗り継ぐ。本土側の港はいずれも鉄道駅から離れており、村上・酒田を経由する陸路の移動時間も見込んでおきたい。
Q. 英語対応や海外からの旅行者の利用は?
A. 佐渡は外国人旅行者の受け入れ実績があり、案内の多言語対応も進んでいる。粟島・飛島は小規模な家族経営の宿が中心で、英語対応は限定的だが、島の自然や磯の食を目的に訪れる海外のリピーターも見られる。船の予約や時刻の確認は日本語が基本になるため、乗り継ぎの手配は余裕をもって進めたい。
本記事の参考情報
・さど観光ナビ(佐渡観光交流機構) — 佐渡の航路・観光情報
・粟島観光協会 — 粟島の宿・アクセス情報
・Wikipedia: 飛島(山形県) — 島の地理・地形の背景
・Wikipedia: 粟島(新潟県) — 島の概要
・Wikipedia: 佐渡島 — 島の歴史・地理
編集部から
日本海側の島旅は、太平洋やケラマの透明な海とはまた別の輪郭を持つ。曇天を映す鈍色の水平線、外洋から届く光、そして本土との間を細い航路だけがつなぐ距離感。佐渡・粟島・飛島を南から北へ継ぐこの4泊5日は、島そのものよりも、島と島の「あいだ」に横たわる海の広さを旅する行程でもある。三島を一度に巡る旅人はまだ少なく、だからこそ、船の時刻表を片手に組む余白がある。次はどの海を、どの順で継いでみたいだろうか。