能登半島の北端、輪島港から日本海を北へ50キロ進んだ先に、舳倉島と呼ばれる小さな島がある。海女文化が今も息づく沖合いの離島と、本島の内側で凪を抱える能登島。震災から3年目の盛夏、両島には少しずつ宿が戻り、フェリーと能登島大橋を使って3泊4日で渡る旅程が成立し始めた。海に挟まれた半島と、その先の島々を、復興の現在地とともに歩く。

Day 宿 エリア Score 客室 目安価格 1行特徴
1 お宿 たなか 輪島市河井町 92 5 輪島塗の塗師蔵を移した、5組限定の漆と能登ヒバの宿
2 さわだ旅館 七尾市能登島向田町 89 9 向田邦子ゆかりの島宿、いろりを囲んで朝獲れの地魚を焼く
3 和倉温泉 宿守屋寿苑 七尾市和倉町 95 65 ¥20–¥37k 能登島大橋を一望する露天風呂と全室オーシャンビュー

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。小規模宿は公開販売価格のサンプルが少ないため掲載を見送りました。

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Day 1:金沢から輪島へ、漆の港町に着く

金沢駅から特急バスで輪島まで約2時間。震災後の道路修復は進み、2026年初夏にはほぼ通常運行に戻った。輪島に着いた午後は朝市通りの再整備状況を歩き、河井町の漆の集積を眺める。海女漁の解禁期に合わせて舳倉島行きのフェリー時刻表を窓口で確認し、初日は本島側の宿に投宿する。

Day 1:お宿 たなか — 輪島・河井町

輪島塗の塗師蔵を移した、漆と能登ヒバが香る5組限定の宿。震災を越えてなお漆の文化を渡す、輪島の核に置かれた一軒。

Media Picks Score: 92 / 100  5室、漆の宿。


お宿 たなか — 輪島・河井町 · 漆と能登ヒバの貸切温泉
PHOTO: お宿 たなか — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

1日5組のみの小規模運営で、特別室は柱や天井を拭き漆で仕上げ、壁は輪島の土壁、床は能登ヒバの無垢板。震災後の再建を経て、漆の宿としての姿勢を保ち続ける。貸切利用できる風呂を時間を気にせず使える落ち着きが、リピーターの言及に繰り返し現れる。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、5室の運営密度に対する評価が極めて高く、漆の質感と地物中心の食事への言及が多い。震災後に営業を再開した時期の対応や、輪島港との距離感を評価する声も繰り返し見られる。にぎやかな観光地らしさを期待する旅程には合いにくく、静かに塗の町を歩きたい旅人の支持が中心。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    漆と工芸文化に関心がある人、舳倉島フェリー利用の前泊、輪島朝市と河井町を歩く一人旅・夫婦旅
  • 向かない:
    家族3世代の大人数旅程(5室・小規模)、観光バスツアー型の慌ただしい移動、温泉の規模感を求める旅

具体情報

  • 所在地: 石川県輪島市河井町22-38
  • 最寄りアクセス: 輪島港フェリーターミナルまで車で約5分
  • 客室数: 5室(特別室含む)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
  • 食事: 漆塗りの空間で能登の食材を使った創作料理
  • 浴室: 総能登ヒバ造りの貸切温泉風呂


Day 2:舳倉島を往復、夕刻に能登島へ渡る

輪島港から舳倉島まではフェリーで片道約90分、夏季のみ運航される。島で過ごせるのは数時間。海女漁の解禁期と重なれば、港の佇まいと小さな島の地形を歩きつつ、海女文化の今を見る滞在になる。夕刻に輪島へ戻り、本島を内側へ抜けて七尾湾、そして能登島大橋を渡る。陸路1時間半、視界が日本海から内海へと切り替わる移動である。

Day 2:さわだ旅館 — 七尾・能登島向田町

脚本家・向田邦子ゆかりの島宿。いろりを囲み、朝獲れの地魚を焼きながら能登島の凪を聞く。

Media Picks Score: 89 / 100  9室、能登島の中心にある旅館。


さわだ旅館 — 七尾・能登島向田 · 向田邦子ゆかりの島宿、いろり料理
PHOTO: さわだ旅館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

能登島の中央、向田町の表通りにある町宿。米と野菜は手作り、魚貝は東側のえのめ漁港で早朝水揚げされたものを仕入れる。いろりを囲んで魚貝を焼きながら、お造りや一品料理を出す形式は、観光地化された旅館の動線とは別の時間が流れる。脚本家・向田邦子ゆかりの宿として知られ、文人が選んだ島宿という来歴が、滞在に静かな縦軸を与える。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、家庭的な運営と地物中心の食事への評価が高い。能登島の祭礼期(夏の向田の火祭り)に合わせた滞在で島の本来の時間を見たという言及が複数あり、観光名所巡りではなく、島で過ごすこと自体に価値を置く旅人が中心。Wi-Fi や設備の現代性を最優先する旅程には合いにくい。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    島時間を味わいたい一人旅・夫婦旅、能登島水族館・向田の火祭り目的、文人ゆかりの宿に関心がある人
  • 向かない:
    大浴場や大規模温泉施設を期待する旅程、夜にバーや街歩きを望む旅、設備の新しさを最優先する人

具体情報

  • 所在地: 石川県七尾市能登島向田町に部12-1
  • 客室数: 9室
  • 食事: いろりで焼く朝獲れの魚貝、能登島の地野菜
  • 立地: 能登島の中央、能登島大橋から車で約15分
  • 来歴: 脚本家・向田邦子ゆかりの宿


Day 3:能登島の内側を歩き、和倉温泉へ移る

朝、能登島水族館を覗き、ガラス美術館のある南岸へ。震災で一時休館した施設も2026年夏には大半が再開し、島内のアクセスは復旧した。昼過ぎに能登島大橋を逆向きに渡り、和倉温泉へ。海の見え方が、島から渡って来た目には初日と違って映る。湾の対岸に能登島の輪郭が浮かぶ、その距離感を確かめながら最後の宿に投宿する。

Day 3:和倉温泉 宿守屋寿苑 — 七尾・和倉温泉

全室から七尾湾を望み、湾越しに能登島大橋の弧が見える。島と本島を3泊で渡ってきた旅程の結びに置きたい一軒。

Media Picks Score: 95 / 100  65室、和倉温泉の中規模旅館。

目安価格 ¥20,000–¥37,000 / 泊 (2名1室・通常期)


和倉温泉 宿守屋寿苑 — 七尾湾を望む全室オーシャンビューの旅館
PHOTO: 和倉温泉 宿守屋寿苑 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

和倉温泉駅から無料送迎で5分、波穏やかな七尾湾と能登島の輪郭を全室から望む。65室規模ながら大浴場と露天風呂が湾に向かって開かれ、湯に浸かりながら能登島大橋を眺める時間が、滞在の中心となる。震災後の和倉温泉郷では宿の営業再開が段階的に進み、当宿は早い段階で本格運営を戻している。能登の里山里海を主題にした食事の組み立てが、復興地域の生産者ネットワークと結びつく。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、海の眺めへの言及が圧倒的に多く、湾を介した能登島の見え方を旅程の山場として評価する声が目立つ。中規模旅館らしい運営の安定感、地物中心の会席への評価も高い。震災後の対応や、和倉温泉郷の現状について宿のスタッフから具体的な情報が得られた、というレビューが繰り返し現れる点も特徴である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    島巡りの締めくくりに温泉を置きたい旅程、湾を望む露天風呂を主目的にする旅、和倉温泉の復興を見届けたい旅人
  • 向かない:
    離れ型のプライベートを求める滞在、深夜に街歩きを楽しみたい旅、小規模旅館の密度を期待する人

具体情報

  • 所在地: 石川県七尾市和倉町ひばり2-52
  • 最寄り駅: JR七尾線 和倉温泉駅 から無料送迎バス5分
  • 客室数: 65室(全室オーシャンビュー)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
  • 浴室: 七尾湾を望む大浴場・露天風呂
  • 食事: 「能登の里山里海」を主題にした会席


Day 4:和倉温泉から金沢へ、能登を逆順に降りる

朝食後、和倉温泉駅から特急で金沢へ約1時間。窓の外、七尾湾が小さくなっていく頃、3泊4日でたどった舳倉島・能登島・和倉の地理が一つの連なりとして見えてくる。沖の島から本島の内海まで、能登半島は一方向の景色を持たない、と滞在を通して分かる。

よくある質問

Q. 舳倉島へのフェリーは通年運航ですか?

A. 舳倉島へのフェリー(輪島〜舳倉島)は基本的に夏季中心の運航で、海況による欠航もある。事前に輪島港の運航時刻と当日の海況確認が要る。日帰り往復可能だが、島で過ごせるのは数時間に限られる旅程となる。

Q. 震災後、能登島大橋は通行できますか?

A. 2026年初夏時点で能登島大橋は通行可能。震災直後の一時通行止からは復旧し、ツインブリッジのと(中能登農道橋)と合わせて2橋体制が戻っている。最新状況は石川県道路情報の公式案内で確認できる。

Q. 英語対応はありますか?

A. 和倉温泉 宿守屋寿苑は規模が大きく英語対応の余地があるが、お宿 たなか・さわだ旅館は小規模な家族経営で、日本語中心となる場合が多い。海外からの旅人は事前にメールでチェックイン時刻と移動の段取りを伝えておくと滞在が滑らかになる。

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 舳倉島フェリーの安定運航と能登島の祭礼期を考えると、6月下旬から8月。盛夏は海女漁の解禁、向田の火祭り(7月最終土曜)と重なる週末は宿の確保が早期から要る。秋(9〜10月)も海況が安定し、観光客が落ち着いた島時間を取れる。

Q. 子連れでも回れますか?

A. 能登島水族館を組み込めば子連れ旅程にも合うが、舳倉島フェリーの揺れは小さな子には負担になりうる。子連れの場合は舳倉島往復を外し、能登島と和倉温泉の2拠点に絞る2泊3日の組み直しを推す。

本記事の参考情報

能登島観光協会 — 能登島の宿・体験・祭礼情報
輪島市観光協会 — 輪島と舳倉島フェリーの公式案内
和倉温泉観光協会 — 温泉郷の復旧と旅館一覧
Wikipedia: 舳倉島 — 海女文化と地理の背景

編集部から

能登半島は本島だけを見ても完結しない。沖合いに浮かぶ舳倉島と、内海に抱かれる能登島。両極の島を3泊4日で繋ぐ旅程は、半島という地形の輪郭を、海から内側へとなぞる作業に近い。震災3年目の盛夏、宿は完全に戻ったわけではないが、戻った宿に泊まることは、復興という言葉を観光客の立場から具体的に理解する手段になる。次は秋の能登、もしくは舳倉島で1泊できる時期の宿の再開について、続報を組みたい。

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