赤坂トラストタワーの38階でエレベーターの扉が開くと、都市の硬質な気配がふっとほどける。床から天井までのガラスの向こうに外苑の緑が広がり、足元には再生された無垢の木、壁には保存処理を施した苔のアート。2026年3月5日に開業した「1 Hotel Tokyo」は、ニューヨーク発のラグジュアリーブランド「1 Hotels」がアジアで初めて手がけた一軒であり、38〜43階の高層に211室を抱える都市のサンクチュアリである。本稿では、バイオフィリック・デザインという欧米生まれの語彙が、日本の素材観と職人の手仕事でどう翻訳されたのかを、開業3ヶ月の現在地から読み解いていく。

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。


1 Hotel Tokyo — 東京・赤坂トラストタワー高層階 · 再生木材と外苑の緑を取り込んだ客室
PHOTO: 1 Hotel Tokyo — 公式サイトを見る →

高層階に降りた森——立地と建築

1 Hotel Tokyo が居を構えるのは、森トラストが開発した複合街区「東京ワールドゲート赤坂」の中核、赤坂トラストタワーである。ホテルが占めるのは38階から43階までの6層。最寄りの溜池山王駅から徒歩3分、赤坂駅から徒歩7分という都心の只中にありながら、客室の窓は皇居外苑の樹冠、東京タワー、そして稜線のように連なるスカイラインを切り取る。高層から見下ろす緑は、地上の街路樹を歩くときとはまったく異なる距離感を持つ。森を上から眺めるという感覚は、このホテルが「自然との共生」を掲げるうえで決定的な意味を帯びている。

1 Hotels のバイオフィリック・デザインは、観葉植物を置けば成立するものではない。建築の骨格そのものに自然のリズムを編み込む思想であり、東京では再生・再利用された無垢材が壁面を覆い、ロビーから客室まで、人の手が触れる面のほとんどに木と石と布の質感が選ばれている。ガラスと金属で完結しがちな超高層のなかに、あえて手仕事の温度を残す——その対比こそが、この一軒の建築言語の核にある。

素材の翻訳——バイオフィリックを日本語にする

欧米のバイオフィリック・デザインを、日本の文脈へどう移し替えるか。ここに、このホテルの最も読み応えのある部分がある。1 Hotels がニューヨークやロサンゼルスで用いてきた再生木材の語彙は、東京では国内の職人文化と再生素材へと置き換えられた。客室の壁を覆う木は、節や色むらをあえて残したまま用いられ、左官が仕上げた塗り壁の陰影、和紙のような繊維の照明、保存処理によって生命の色を留めた苔のアートが、各室に静かに配される。

これらは「和の意匠」を表層的に貼り付けたものではない。素材が経てきた時間と、それを扱う手の記憶を、空間のなかに翻訳として置き直す試みである。海外のラグジュアリーブランドが日本に上陸するとき、しばしば「日本らしさ」が記号化されて消費される。1 Hotel Tokyo がそこから一歩引いて見えるのは、自然との関係性というブランド本来の思想を軸に据え、その実現手段として日本の手仕事を選んだ順序の正しさにある。滞在中に分かるのは、装飾ではなく素材そのものが語っているということだ。

211室の構成——スイートとペントハウスの余白

全211室の内訳には、20のスイートと3つのペントハウスが含まれる。標準的な客室でも、床から天井までの窓が外苑の緑を室内深くまで導き、ベッドサイドの無垢の什器、麻やウールの自然な手触りの寝具、植栽が、都市の高層という条件を忘れさせる。上位カテゴリーへ進むほど窓の面積と眺望の幅は広がり、最上層のペントハウスではスカイラインと緑の両方を一望する余白が確保される。

数値情報を一つ挙げておくと、客室はおよそ40㎡台から始まり、スイート・ペントハウスでは100㎡を超える構成も用意される。都心の超高層ラグジュアリーとして、客室面積に対する眺望と自然素材の密度の高さが、この一軒の価値を測る基準になる。

滞在の体験——NiNi、スパ、屋内プール

食の中心となるのは、朝・昼・夜を通すレストラン「NiNi」。地域の生産者とつながる食材を軸に、季節の移ろいを皿の上に置く構成で、外苑の新緑期には緑の気配が料理にも通う。館内には2つのバー/ラウンジがあり、夜は都市の灯りを見下ろしながら静かに時間を引き延ばせる。

身体をほどく場として、スパでのマッサージ、屋内プール、フィットネスセンターが揃う。1 Hotels が世界各地のホテルで一貫して掲げてきたウェルネスの思想は、都市の高層という非日常のなかでこそ際立つ。窓の外に広がる緑を視界に入れながら水に身を委ねる時間は、地上の喧騒からの距離を体感として教えてくれる。

集約レビューが映すこの宿の本質

開業からまだ日が浅いものの、公開レビューデータを集計したところ、滞在者からの評価は総じて高い水準に集まっている。とりわけ繰り返し言及されるのは、客室から届く外苑の緑と眺望、そして木や苔といった自然素材がもたらす静けさである。都心にありながら森のなかにいるような感覚という、このホテルが意図した体験そのものが、滞在の印象として残っているとうかがえる。

一方で、開業3ヶ月という時間軸ゆえに、運営の細部が成熟しきっていない局面が見て取れる場面もある。新規開業のホテルが時間をかけてサービスの呼吸を整えていく過程にあることは、訪れる側も織り込んでおきたい。逆に言えば、開業直後の張り詰めた清新さと静けさは、この時期にしか味わえない。

こんな旅人に

  • 向く: 都市に居ながら自然との距離を縮めたい旅人、デザインと素材の背景を読み解きたい滞在者、新規開業のラグジュアリーをいち早く体験したい人、英語での滞在を望む海外からの旅行者
  • 向かない: 観光地巡りで宿に戻る時間が短い旅程の人、賑やかなリゾート感や派手な演出を求める人、開業直後の運営の揺らぎを許容しにくい人

具体情報

  • 所在: 東京都港区・赤坂トラストタワー 38〜43階
  • 最寄り駅: 溜池山王駅から徒歩3分 / 赤坂駅から徒歩7分
  • 客室数: 全211室(20スイート・3ペントハウスを含む)
  • 客室サイズ: 約40㎡台〜(上位カテゴリーは100㎡超)
  • 食事: オールデイダイニング「NiNi」、バー/ラウンジ2軒
  • 設備: スパ、屋内プール、フィットネスセンター
  • 開業: 2026年3月5日(1 Hotels アジア初進出)
  • 言語対応: 英語対応可

Media Picks Score

94 / 100  211室、都市型ラグジュアリーホテル。

目安価格 ¥127,000–¥186,000 / 泊 (2名1室・通常期)

立地(赤坂高層・外苑の緑)、設備(スパ・プール・NiNi)、体験(バイオフィリック・デザインの密度)、素材の翻訳という編集適合度のいずれもが高く、ブランドのアジア初進出という希少性が加わる。開業直後ゆえ運営の成熟は時間に委ねられるが、設計思想と立地の完成度において、現時点の東京で読み解く価値の最も高い一軒と言える。

よくある質問

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 編集部が推す時期は、外苑の緑が最も濃くなる新緑期の5〜6月。高層階の窓から届く緑の密度がこのホテルの設計意図と最も響き合う季節であり、開業直後の清新さも残る。秋の紅葉期も眺望が映えるが、緑を室内に取り込む体験を重視するなら初夏が適している。

Q. 英語での滞在は可能ですか?

A. 1 Hotels は世界各地で展開する国際ブランドであり、東京でも英語での滞在に対応する。海外からの旅行者にとって、言語面での障壁は小さい。バイオフィリック・デザインという共通言語を持つブランドであるため、海外の系列ホテルを知る滞在者ほど東京版との差異を楽しめる。

Q. 子連れでも滞在できますか?

A. 都市型ラグジュアリーホテルとして、家族での滞在も想定されている。客室は静けさと自然素材を軸に構成されており、広めのスイートやペントハウスを選べば家族での余白も確保できる。具体的な添い寝やアメニティの可否は公式サイトで確認したい。

Q. 最寄り駅からのアクセスは?

A. 溜池山王駅から徒歩3分、赤坂駅から徒歩7分。東京駅・羽田空港の双方から公共交通でアクセスしやすく、都心の只中にありながら高層階へ上がれば喧騒から切り離される。

Q. 予約のタイミングは?

A. 2026年3月開業の新しいホテルで、開業直後の注目期にあたるため、週末や繁忙期は早めに枠が埋まる傾向がある。通常期の平日であれば比較的選択肢が広い。希少性の高い開業直後の滞在を狙うなら、計画は早めに立てておきたい。

本記事の参考情報

1 Hotel Tokyo 公式サイト — 客室・設備・立地の一次情報
Wikipedia: 赤坂 — エリアの歴史・地理の背景

編集部から

海外のラグジュアリーブランドが日本に降りるとき、しばしば問われるのは「日本らしさ」をどう扱うかである。1 Hotel Tokyo の回答は、意匠を真似ることではなく、自然との関係性というブランド本来の思想を軸に、その実現を日本の素材と手仕事に委ねることだった。高層に降りた森という逆説が、開業3ヶ月のいま、どこまで根を張り、どう育っていくのか。新緑が室内に届くこの季節に、その現在地を自分の目で確かめてみたい。次は、東京以外の都市に上陸する国際ブランドが、その土地の素材をどう翻訳していくのかも読んでいきたい。

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