雪解けの杉林に、いま一軒の山岳ウェルネスが降りようとしている。モルディブの環礁やオマーンの峡谷で磨かれてきた国際ブランド Six Senses が、次に選んだのは新潟・妙高。標高の高い赤倉の斜面に、全57室と21戸のレジデンスを備えた計画が2026年4月に着工する。その開業前夜を、いまこの雪国で源泉かけ流しの湯を守り続けてきた一軒——赤倉温泉「高原ホテル対山」——を軸に読み解く。ブランドの文法が、海から雪へ、砂から杉へと置き換わるとき、何が翻訳され、何がこの土地に元から在ったのかが見えてくる。
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。Six Senses 妙高に関する記述は着工前の公開情報に基づく計画値です。

Six Senses が雪国を選んだ理由
Six Senses は、インド洋やアラビア半島の乾いた光のなかで育ったブランドである。ラグーンを見下ろすヴィラ、砂漠の峡谷に沈むスパ——その文法はこれまで、暖かい水と強い陽射しの土地に置かれてきた。妙高はその真逆に位置する。日本有数の豪雪地帯であり、冬は数メートルの雪が杉林を白く沈める。ここに全57室、上層に21戸のレジデンスを備えた計画で、その多くの客室に個室温泉が据えられるという。海のブランドが、雪と杉と温泉という別の語彙に翻訳されていく。その現場が、いま妙高杉ノ原スキーリゾートの敷地内で動き始めている。
設計を担うのは隈研吾と久米設計。棚田や季節の移ろいを映す「風の流れ」を主題に据えたと公表されている。国際ブランドが日本の山岳温泉地に本格的なウェルネスリゾートを置くのは珍しく、雪国の観光が「滑る場所」から「滞在する場所」へと重心を移す象徴とも読める。
着工前夜に確定していること
公開情報の範囲で確定しているのは、次の数値である。事業主体は IHG ホテルズ&リゾーツとペイシャンス・キャピタル・グループ。着工は2026年4月、開業は2028年冬とされる。客室57室、レジデンス21戸、レストラン2軒とバー、スパエリア、そしてスキーウェアのフィッティングを行うブティックが計画に含まれる。標高の高い斜面という立地は、盛夏には避暑地としての意味を帯び、冬にはスノーウェルネスの舞台になる。東京から鉄道でおよそ2時間、車でおよそ3時間という距離感は、週末を単位に動ける「近い異国」の設計とも言える。
これらはあくまで着工前の計画値であり、開業までに細部が変わる可能性はある。だからこそ、いまこの土地で温泉ウェルネスがどう成立しているのかを、既存の一軒から確かめておく価値がある。

高原ホテル対山 — 雪国の温泉ウェルネスを先に体現する一軒
妙高山の裾、赤倉温泉の斜面に建つ全46室。源泉かけ流しの野天風呂と温泉ソムリエが、国際ブランド以前からこの土地の湯を語ってきた一軒。
Media Picks Score: 94 / 100 46室、赤倉温泉の中規模山岳ホテル。
目安価格 ¥32,000–¥52,000 / 泊 (2名1室・通常期)
なぜこの一軒を軸に読むのか
Six Senses の予定地から谷ひとつ隔てた赤倉温泉に、高原ホテル対山は1975年から建つ。ここが軸にふさわしいのは、国際ブランドがこれから翻訳しようとしている要素——源泉かけ流しの湯、雪と杉に囲まれた高原の静けさ、そして温泉を「作法として案内する」姿勢——を、すでに一軒のスケールで体現しているからだ。カルシウム・マグネシウム・ナトリウム—硫酸塩・炭酸水素塩泉が、庭園の貸切野天風呂と大浴場に注がれ、木造のサウナが15時から22時まで開く。温泉ソムリエが常駐し、湯の入り方や泉質を言葉にして手渡す。ウェルネスという外来語が来る前から、この土地には湯を読む文化があったことが分かる。
滞在の体験
盛夏の妙高は、麓の暑さが嘘のように涼しい。標高の高い斜面に立つ対山では、朝晩に窓を開けると杉林を渡る風が入り、避暑地としての本領が現れる。2025年の改装で客室の一部には半露天の温泉が設けられ、木の質感を基調とした室内は落ち着いた明度でまとめられている。食事は日本海の魚介と妙高の山の幸を組み合わせた季節の会席が供される。派手さより、湯と食と静けさの均衡で滞在を組み立てる宿である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、湯そのものへの評価と、温泉の案内が丁寧である点が繰り返し挙がる傾向が確認できた。源泉かけ流しの体感、貸切で使える野天風呂の静けさ、そして高原の空気を評価する声が中心を占める。一方で、赤倉温泉一帯に共通する起伏のある地形や、山岳リゾートゆえの季節による表情差は、旅程を選ぶ余地として読める。総じて、湯と滞在の質を軸に据える旅人からの支持が厚い一軒だと言える。
向く人 / 向かない人
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向く:
源泉かけ流しの湯を目的に据える旅、盛夏に避暑を求める高原滞在、Six Senses 開業前の妙高を先に歩いておきたい旅行者、雪国のウェルネスの原型に触れたい人 -
向かない:
海辺のリゾート的な開放感を望む旅、平坦な立地で移動負担を避けたい人、国際ブランドの均質なラグジュアリーそのものを求める旅程
具体情報
- 所在地: 新潟県妙高市赤倉温泉426-2
- アクセス: 東京から北陸新幹線で上越妙高駅まで約1時間46分/妙高高原ICから車で約10分
- 客室数: 46室(2025年に一部改装、半露天温泉付き客室を含む)
- 温泉: カルシウム・マグネシウム・ナトリウム—硫酸塩・炭酸水素塩泉/源泉かけ流し・大浴場・庭園貸切野天風呂
- サウナ: 木造サウナ(15:00–22:00)
- その他: 温泉ソムリエ常駐/日本海の魚介と妙高の山の幸による季節会席

Media Picks Score
94 / 100 — 評価の内訳: 立地(Six Senses 予定地に隣接する赤倉温泉) / 温泉(源泉かけ流し・硫酸塩炭酸水素塩泉・貸切野天) / 体験(木造サウナ・温泉ソムリエ・高原の避暑) / 価格感(1泊2名 ¥32,000–¥52,000) / 編集適合度(雪国ウェルネスの原型としての読み替え)。
よくある質問
Q. ベストシーズンはいつですか?
A. 妙高・赤倉温泉は四季で表情が大きく変わる。盛夏は麓より数度涼しく、避暑を目的にした高原滞在の静けさが際立つ。編集部が推すのは、避暑としての夏と、モザイク壁画の題材にもなった紅葉の秋。冬は本格的な雪国で、Six Senses が狙うスノーウェルネスの舞台でもある。
Q. 英語対応はありますか?
A. 妙高・赤倉一帯はスキー文化を通じて古くから海外の旅行者が訪れてきたエリアで、外国人客の受け入れに慣れた宿が多い。事前に問い合わせれば言語面の配慮を確認できる。2028年冬に開業予定の Six Senses 妙高は国際ブランドとして本格的な多言語対応が見込まれる。
Q. 子連れでも滞在できますか?
A. 高原ホテル対山は家族連れの滞在にも用いられる中規模の山岳ホテルで、会席の食事と温泉を中心にした過ごし方ができる。貸切の野天風呂があるため、幼児連れでも湯を落ち着いて楽しめる。段差のある地形なので、移動しやすい客室の希望は事前に伝えておくとよい。
Q. アクセスは?
A. 上越妙高駅から車で約20分。東京からは北陸新幹線で上越妙高駅までおよそ1時間46分、そこから在来線・車で赤倉温泉へ。妙高高原ICからは車で約10分。Six Senses 妙高の予定地(妙高杉ノ原)へは、東京から鉄道でおよそ2時間、車でおよそ3時間とされる。
Q. Six Senses 妙高はいつ利用できますか?
A. 2026年4月に着工し、開業は2028年冬とされる。全57室とレジデンス21戸、レストラン2軒とバー、スパエリアを備える計画で、多くの客室に個室温泉が設けられる予定。着工前の公開情報に基づく計画値のため、詳細は今後変わる可能性がある。
本記事の参考情報
・妙高観光局(Myoko Tourism) — 妙高・赤倉エリアの観光情報
・Wikipedia: 赤倉温泉(新潟県) — 温泉地の歴史・地理の背景
・Wikipedia: 妙高山 — 山岳・地形の背景
・Travel Voice(2025年10月22日) — Six Senses 妙高の計画に関する公表情報
編集部から
雪国に降りる国際ブランドを、開業のニュースだけで消費するのはもったいない。海と砂の文法が、雪と杉と温泉にどう置き換わるのか——その翻訳の過程は、この土地が元から持っていた湯の文化を照らし出す。高原ホテル対山のような一軒に身を置くと、Six Senses が加える新しい層と、妙高が長く育ててきた原型の両方が同時に見えてくる。開業前夜のいま、あなたはどちらの妙高を先に歩いておきたいだろうか。国際ブランドの地理を固有名詞で追う旅は、まだ始まったばかりだ。